本誌で好評連載中の、美容ジャーナリスト・齋藤 薫さんから悩める40歳へおくる、美と人生への処方箋。今回は、「環境変化と体重増加」について。生活環境が変わるストレスは、体の内外にダメージを与える 例えば、会社を辞めたり、移住したり、何らかの事情があってしばらく会わなかった人が、女性としてのタイプが変わってしまうほど太っていることがある。ちょっと食べ過ぎての体重オーバーとは、明らかに違うのだ。食べ過ぎなら、せいぜいが2、3キロを行ったり来たりする程度。でも、ひょっとして精神的に何かあった? あったよね? と、思わず心の中で尋ねてしまうような、心配な太り方をすることって誰にでもあるものなのだ。つまり“ストレス太り”なのは明らかだが、環境変化はどこかで人を麻痺させるから、あるいは自分がそれほど変わったなど、本人も気づいていないのかもしれない。生活環境が変わるストレスは、そのぐらい体の内外にダメージを与える。だから体重増加も途中から放置してしまいがちで、ちょっと危うい。せめて気付かせてあげなければ。 言うまでもなく、慣れない環境で余計な気を使うとか、緊張が続くとか、理由はたくさんあるけれど、じゃあ同じように緊張が続いても、太らない人もいるのはなぜなのか? 痩せていく人もいるのはなぜなのか? 一方で今、多くの人が口にするコロナ太りはどうだろう。コロナは全員一律に大きな環境変化をもたらしたわけだが、コロナによって痩せた人ってまずいないはず。もちろん単純にずっと家にいて運動不足、食事を楽しむしかなかったりするのだから当然のこと。それにしてもなぜ痩せる人はいないのか? ズバリこれは心の動き方の差。ご存知のようにストレスを受けると、ストレスホルモン、コルチゾールに対抗するためいわゆる“幸せホルモン”セロトニンが減って、食欲にブレーキがかからなくなってしまう。つまり、ストレスに“幸せホルモン”が負けるのだ。逆に言えば、仮に環境が変わっても、心が前向きに興奮するようなことがあれば、勝手に食欲が抑えられてむしろ痩せられるということ。例えばだけれど、転職して新しい仕事場に身を置いたら、そこに出会いがあって恋に落ちた、みたいなパターンなら、むしろ見事に痩せる。環境の変化によって、不安や緊張がありながらも感動が大きくなった時、女性は目立って美しくなるのだ。逆に、生活変化は心身の良い切り替えとなって、神経物質セロトニンのスイッチが入ることもあるのだろう。つまり、環境変化は心の向きを劇的に変え、人生を塗り替えるチャンスでもあるのだ。 家にいても常に自分を意識し続けること(右から)肌だけでなくマインドケアもテーマにする新ブランドBAUM。オイルとエッセンスの2 層をまぜて。ベタつかずさらっとした仕上がりに。モイスチャライジング オイル 60㎖¥8,000●樹木の香りで心の底からリラックス。アロマティック ルームスプレー 100㎖¥5,000/BAUM ●不要な角質を落とし、ボディ全体にハリと透明感が。スクラブの気持ちよさは心のケアにも有効。デッドシー ボディスクラブ¥6,500/SABON Japan コロナ自粛で太ってしまうのも、それこそセロトニンを高める感動がなかったからではないか。恋をするか、もしくは涙を流すような感動を覚えるか、そのぐらいの心の震えがないとストレスに負けてしまう。だからさらに続きそうな巣ごもり生活では、せめて『愛の不時着』や『梨泰院クラス』一気見のように、疑似恋愛やドキドキはらはらを絶えず注入しておくべきなのかもしれない。 そして、家にいても常に自分を意識し続けること。オシャレして外出する時間が少なくなればなるほど、体は無防備となって緩んでいく。体重計により多く乗るほどに体重はきちんとコントロールされると言われるから、やはり脂肪の量は意識で大きく変わるのだ。ちなみに食べ過ぎたら翌日は食べるのを控えるというチマチマしたダイエットも、食事が脂肪に変わるのには約2日かかるというから、そうやってチマチマ調整していく方法はアリなのだ。加えて、出掛けない日も、全身に意識を張り巡らせること。誰が訪ねてきても、恥ずかしくない身繕いだけは欠かさないことなのだ。 自分から目を離さないためにも、ボディケアはひと手間かかるが、体ごと自然界の心地よさに浸れるものを。サボンのデッドシー ボディスクラブは、死海の塩と死海沿岸植物オイルを使った贅沢なスクラブ、その一手間が心地よい名品だ。肌のみならず、体も引き締めてくれるはず。スキンケアもバウムのお手入れ法で何気ない日常にも感動をもたらす心がけを。部屋に樹木の香りをスプレーし、森林浴の環境を作って、その中でじっくりとお手入れする。心が震えるはずだ。齋藤薫 Kaoru Saito美容ジャーナリスト、エッセイスト。美容やファッションの潮流に社会的な視点を加え、美しくありたいと願うアラフォーの未来を照らす。『キレイはむしろ増えていく。大人の女よ! もっと攻めなさい』(集英社インターナショナル)など著書多数【Marisol 2020年10月号】撮影/John Chan スタイリスト/郡山雅代(STASH)