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定番のご近所コーデ、ニット×デニムパンツも旬のアイテムでちょっぴりよそ行き要素をプラス誰かに会うからというわけではなく、自分が楽だからついつい選んでしまうご近所コーデの定番、ニット&デニム。普段パソコンで目を酷使し続けているので週末ぐらいは目を休ませてあげようと思い、公園へおでかけ。よく考えると週末でも映画を見たり、小説を見たり、ネットサーフィンしたりと、目は全く休んでいなかったことに気づく。なんとなく旅行には行けない時期だからこそ、せめてご近所で空でも眺めて目を開放させてあげなくちゃ。ご近所とはいえ、斜めがけの巾着バッグにタッセルローファー、大判チェックストールと、旬の小物でおしゃれの意識も忘れずに。ニット¥27,000/インターリブ(サクラ) デニム¥24,000/アングローバル(イレーヴ) ストール¥23,000/シジェーム ギンザ(ロバット&グリーン) イヤカフ¥16,000/ボウルズ(ハイク) バングル¥39,000/プリュイ トウキョウ(プリュイ) 靴¥52,000/アマン(ペリーコ) バッグ¥15,800/ショールーム セッション(ヤーキ)SACRA (サクラ)商品一覧【SHOP Marisol】▶YLEVE (イレーヴ)商品一覧【SHOP Marisol】▶PELLICO (ペリーコ)商品一覧【SHOP Marisol】▶撮影/佐藤 彩 スタイリスト/佐藤佳菜子 文/加藤理恵 ※上記の内容はWEBオリジナルで構成されたもので、本誌の内容とは異なります▼「デニム」を使ったコーデの関連記事もチェック1月22日
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書評家・ライターの江南亜美子が、アラサー女子におすすめの最新本をピックアップ! 今回は、小説を読むことの恍惚と不安を味わせてくれる青山七恵『みがわり』をご紹介します。 ナビゲーター 江南亜美子 文学の力を信じている書評家・ライター。新人発掘にも積極的。共著に『世界の8大文学賞』。 自分とうり二つの人間はこの世に3人いるという。いわゆるドッペルゲンガーがテーマの物語は少なくないが、本作は一風変わっている。無名の作家、律は、自分に会いに来ていきなり泣いた九鬼梗子から、亡き姉にそっくりだと告白される。物語作りが得意だった姉に代わって彼女の伝記を書いてとの無茶な依頼を引き受けたのも好奇心からだった。梗子の娘の沙羅、ディカプリオ並みに二枚目な夫の青磁とも深く知り合い、過去を掘り下げるうち、梗子とその姉の百合との確執があらわになる。書いては見せ、読まれては書き直す、百合の生前の物語。律は虚構と真実の渦に巻き込まれるのだ。「百合とはいったい何者なのだろう」物語は終盤、律が「軟禁」状態で執筆を強制され、ムードが変わる。作家に書かれることで初めて出現する物語の力が、律の世界をのみ込んでいくのだ。ページをめくるたび、位相の変わるストーリーのダイナミズムにより、読者は一気呵成にラストまで読むことになる。目覚めながら見る夢の記録のような、非現実と現実の交錯。自分という存在は、誰が主人公の物語のなかに生きているのかと、ふと心もとなくなってくる。不思議な読後感が味わえる作品だ。 『みがわり』 青山七恵著 幻冬舎 1700円 「本当のお話って何?」虚構の迷宮に誘われて駆け出し作家に届いた依頼は、自分とそっくりだった女性の「伝記」を書くこと。取材が進み、家庭事情が暴かれていく。書く/書かれるの関係をめぐる不思議な長編小説。サスペンスから驚きの結末へ。 これも気になる! 『るん(笑)』酉島伝法著集英社 1800円 平熱は今日から38度。オカルトを風刺する小説疑似科学とスピリチュアル療法が、科学を凌駕した世界。「わだかまり」は千羽鶴で、発熱は祈りで治癒できるとされるディストピアを、どう生き延びるか。不安感に襲われる、気鋭のSF作家の中編集。 イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2021年2月号掲載 【BAILA 2月号はこちらから!】1月22日
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ノンノインタビュー神尾楓珠伊藤あさひ阿久津仁愛人気マンガのドラマ版で注目の3人が共演!―― 自分をブスだと思い込んでいる地味な女子高生がキュートに変身し、恋に翻弄されていく人気コミック『マイルノビッチ』がドラマ化。ヒロインのまいるを神的メイク術で変えてみせる熊田天佑に神尾楓珠さん、まいるが惹かれる他校の爽やか男子・工藤成太朗に伊藤あさひさん。そしてまいるの幼なじみの香月未来には阿久津仁愛さんが扮しています!伊藤 天佑を楓珠くんが演じるって聞いて、結構そのままだと思った。ちょっと毒舌でクールなキャラは一緒だよね。神尾 成太朗もあさひっぽいよね。普段は本当にフツーの大学生なんで(笑)、すごく近いなって思いました。仁愛は、ツンツンしてる未来ちゃんと違うかも。阿久津 確かに。でもそういうこじらせ男子感は演じていて楽しいなって思う。Qこの中で一番女子の気持が分かるのは?姉妹に囲まれている仁愛かな(神尾)「僕は妹がいるけど年が離れてるし、あさひは男兄弟だからね」(神尾)、「女の子の相談とかにきちんと乗ってあげそうな感じ。本心を聞ける立ち位置にいる気がするよね」(伊藤)、「んー。相談に乗るっていうよりも、自分がなんでもしゃべっちゃうタイプかな。実は聞くのは苦手かも」(阿久津)―― まいるはルックスに自信がなく、天佑に「ブスを言い訳に使うな」と指摘される女の子。3人のコンプレックスは?阿久津 僕は学校でも家でも「女の子みたいで可愛いねー」といじられていて。「やめろー!」って感じでした(笑)。 伊藤 僕は優柔不断なこと。でもお仕事を始めてからは、思い切って飛び込んだほうが、案外うまくいくと気づきました。 神尾 僕のコンプレックスは明るくて愛されキャラな兄に勝てないこと。僕のほうが勉強もスポーツもできて聞き分けがよかったからか、可愛がられるのは手がかかる兄のほうで。でも、俳優のお仕事を始めてからは、親戚中が僕に興味を持ってくれてよかったです(笑)。 伊藤 コンプレックスは誰でもあるよね。 神尾 そうそう。でも、まいるが天佑の言葉で前向きになれるように、きっかけがあれば魅力に変えることはできるはず。阿久津 このドラマが、ポジティブになるきっかけになれたら最高だよね!Q生まれ変わるなら何になりたい?100m走の選手になってオリンピックに出る!(伊藤)「世界最速の男になれたら気持ちいいだろうな」(伊藤)、「僕はアニメの中で異能力を使って戦いたい」(神尾)、「役で演じられそうじゃない?」(阿久津)、「演じるんじゃなくて本当にキャラになりたいんだよね」(神尾)、「僕はめっちゃ頭がいい人になりたい!」(阿久津)、「もう、その発言が……(笑)」(伊藤)P r o f i l e(中)●かみお ふうじゅ1999年1月21日生まれ、東京都出身。ドラマ『左ききのエレン』、映画『私がモテてどうすんだ』などに出演。『樹海村』が2月5日公開。(左)●いとう あさひ2000年1月19日生まれ、東京都出身。ドラマ『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』、連続テレビ小説『エール』などに出演。(右)●あくつ にちか2000年12月23日生まれ、栃木県出身。主演を務める音楽劇「プラネタリウムのふたご」が2月6日からスタート。映画『ツナガレラジオ〜僕らの雨降Days〜』が2月11日公開。Huluオリジナル『マイルノビッチ』木下まいる(桜井日奈子)は恋愛経験ゼロの超ネガティブ女子。ところが学校一のイケメン熊田天佑(神尾楓珠)の教えで、驚くほどキレイに。合コンで工藤成太朗(伊藤あさひ)と出会い、距離を縮める。幼なじみの香月未来(阿久津仁愛)にあきれられつつ、初めての恋に浮かれるまいるだが……。●2月12日(金)よりHuluにて独占配信 2021年3月号掲載撮影/斎藤大嗣 ヘア&メイク/吉村英里 スタイリスト/矢島世羅 取材・原文/松山梢 web構成/轟木愛美 web編成/レ・キャトル1月21日
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海外ドラマに詳しいライター・今 祥枝とBAILA編集者・ミツコが、30代女性におすすめのドラマをピックアップ! 今回は、ニコール・キッドマン&ヒュー・グラントがセレブな夫婦役扮した「フレイザー家の秘密」をご紹介します。 ナビゲーター 今 祥枝&編集ミツコ 今 祥枝(左)●『小説すばる』で「ギークTV」連載中。 Twitter:@SachieIma Instagram:sachie.ima編集ミツコ(右)●「ゴシップガール」はB(ブレア)派。買い集めたDVD BOXが捨てられない。 今 ニコール・キッドマンとヒュー・グラントが上流階級の夫婦、グレイスとジョナサンを演じるサスペンス。意外にも初の顔合わせはニコールのラブコールによって実現したそう。 ミツコ(以下ミ) なんかわかる(笑)。そこはかとなくダメそうな感じが漂う優男タイプのヒューが、かっこよくて頼りになる夫と見せかけて、実は……という設定もいい感じだし。 今 部屋着からゴージャスなドレスアップなど、ニコールの知的&華やかなセレブ妻もハマり役。タイトルバックで彼女自身が歌っているスタンダードナンバー「私の夢を見て」も素敵♡ ミ ニコール演じる臨床心理士のグレイスは、どこか不安定な雰囲気もあって、彼女自身の深層心理もすごく気になるよね。 今 全6話の監督を手がけたのは、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『未来を生きる君たちへ』のスサンネ・ビア。こういう女性の複雑な心理をすくい取るのがうまいなと思う。 ミ ニューヨークのロケーションも楽しい。一人息子ヘンリーが通っている名門私立学校が、ドハマりした「ゴシップガール」でおなじみのロケ地なのもテンション上がった! 今 クリエイターは「アリーmyLOVE」や、最近では「ビッグ・リトル・ライズ」でニコールと組んだ才人デヴィッド・E・ケリー。衝撃的な殺人事件から夫婦を待ち受ける裁判のゆくえまで、さすがの面白さ。 ミ ミーハーに楽しめる要素も満載の、見ごたえのある一作です! ©2021 Home Box Office, Inc. All Rights Reserved. HBO® and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc. All Rights Reserved. 「フレイザー家の秘密」 アメリカの作家、ジーン・ハンフ・コレリッツのサスペンス小説を全6話でドラマ化。マンハッタンで医師の夫ジョナサン、名門私立校に通う息子ヘンリーと幸せなセレブライフを送る臨床心理士グレイス。息子の学校に通う生徒の母親が殺害されるという事件が起き、同時に夫が姿を消したことからグレイスの人生は一変。世間を騒がせる裁判へと巻き込まれていく……。息子役は『ワンダー君は太陽』のノア・ジュープ、祖父役にドナルド・サザーランドほか。スターチャンネルにて、1月27日より毎週水曜23時〜ほか(全6話)※1月23日に字幕版第1話が無料放送 イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2021年2月号掲載 ※配信情報は記事掲載時点のもので、変更になっている場合や、配信が終了している場合があります。 【BAILA 2月号はこちらから!】1月20日
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海外エンタメ好きなライター・今 祥枝が、30代女性におすすめの最新映画をピックアップ! 今回は、第159回直木賞受賞の、島本理生のベストセラー小説を映画化した『ファーストラヴ』をご紹介。父親を殺した娘の動機を解き明かしていく衝撃作は必見です! ナビゲーター 今 祥枝 海外エンタメが大好きなライター。一年365日、映画&ドラマざんまいの日々。Twitter:@SachieIma Instagram:sachie.ima ©2021 「ファーストラヴ」製作委員会 『ファーストラヴ』 アナウンサー志望の女子大生、聖山環菜(芳根京子)が逮捕された。著名な画家である父・那雄人を包丁で刺し殺し、血まみれで川沿いを歩いていたのだ。ところが警察の取り調べで彼女が語ったのは、「動機はそちらで見つけてください」という挑発的な言葉だった。なぜ、彼女は父親を殺さなければならなかったのか?環菜の心の奥に隠された真実を求めて、全身全霊で事件に向き合う公認心理師の真壁由紀(北川景子)は、彼女の義弟で弁護士の庵野迦葉(中村倫也)と協力し合いながら、犯行の動機を探っていく。第159回直木賞を受賞した、島本理生のベストセラー小説を映画化した『ファーストラヴ』。冒頭から俳優陣の圧巻の演技と相まって、息詰まるようなテンションの濃密な映像世界に引き込まれる。ジャンルとしてはサスペンス・ミステリー。だが、由紀もまた胸にしまっていた父親のこと、そしてやさしく理解ある夫・我聞(窪塚洋介)の弟である迦葉との過去と対峙しながら、“女性であること”で生じる自らの深い苦しみを環菜の中にも見いだしていく。その過程は、重いテーマを扱った社会派ドラマの側面も。なぜなら、由紀や環菜が体験してきた異性からの“性的な視線”に対する不快感や、本能的に身の危険を覚える恐怖は、多くの女性が肌感覚でわかるはずだから。日常ではなんでもないフリをしているけれど、実際にはこんなことぐらいで……と誰にも言えずに、悲しかったり悔しい気持ちを押し殺してしまう。もしもそんな経験があるならば、魂が共鳴した由紀と環菜が、ついに口にする心の叫びに、思いがけず理解者が現れたような気がして、癒される自分がいるかもしれない。 監督/堤幸彦 出演/北川景子、中村倫也、芳根京子 公開/全国にて2/11より こちらも必見! ©2019 CREATE ENTERTAINMENT, LAZONA, KAMEL FILMS, TORNADO FILMS AIE, FCOMME FILM . All rights reserved. 『43年後のアイ・ラヴ・ユー』 アルツハイマーを患い、施設に入居した昔の恋人で人気舞台女優リリィのために、自らもアルツハイマーの"フリ"をして入居する元演劇評論家のクロード。彼女が大好きなユリの花で部屋を埋め尽くしたり、ガーシュインの名曲にのせたダンスから思い出のシェイクスピアの『冬物語』まで、全編を彩るロマンチックな要素に心ときめく愛の物語。 監督・脚本/マーティン・ロセテ 出演/ブルース・ダーン、カロリーヌ・シロル 公開/新宿ピカデリーほかにて1/15より ©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会 『すばらしき世界』 実在の人物をモデルにした小説『身分帳』を原案に、『永い言い訳』の西川美和が映画化。恵まれない生い立ちから人生の大半を裏社会と刑務所で過ごした三上が、身元引受人や近所のスーパーの店主らの助けを得て再出発する姿を描く。まっすぐな性格ゆえ、社会と摩擦が生じてしまう三上を、愛すべき人物として体現する役所広司の名演が涙を誘う。 脚本・監督/西川美和 出演/役所広司、仲野太賀 公開/全国にて2/11より イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2021年2月号掲載 【BAILA 2月号はこちらから!】1月13日
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ライバルから同志へ。注目騎手、荻野極・坂井瑠星・藤田菜七子の3人による同期会 歴史的レースの数々に大いに競馬界が盛り上がった2020年。それゆえに競馬に特に興味を持っていなくても、“アーモンドアイ”(注1)や“コントレイル”、”デアリングタクト”などの競走馬の名前を耳にしたことがある人も多いのでは? 2021年1月12日発売のBAILA2月号「推し活」特集には、そんな熱いレースを繰り広げる競走馬の手綱を握る注目の騎手3人がそろって登場!本誌にはスペースの都合で掲載しきれなかった3人の独占インタビューを、ウェブ限定でお届け。学生時代の思い出など、同期ならではの話を大公開!注1:2020年に競走馬を引退。現在は繁殖牝馬としての生活をスタートさせている 藤田菜七子 ふじたななこ●1997年8月9日生まれ。小学5年生のときに競馬中継を見て騎手を志す。JRAの女性騎手としては史上初の100勝を果たし、現在も記録更新中。休日はパン屋さんへ行くのが楽しみ。 荻野極 おぎのきわむ●1997年9月23日生まれ。ドリームジャーニーが勝った有馬記念がきっかけで騎手の道へ。初勝利は単勝433.9倍の大穴をあけ、クセのある馬を乗りこなす技術と観察眼に定評あり。 坂井瑠星 さかいりゅうせい●1997年5月31日生まれ。父も元騎手という競馬一家で育つ。昨年はジャパンダートダービーにてG1初制覇。休日もレース映像を見てノートをつけるなど同期イチのストイックな性格。公式インスタグラム@ryusei_sakai.official 競馬学校の32期生。三者三様の思いと生活 編集部:初めて会ったのはいつでしたか? 坂井:僕と菜七子は中学2年生の時に、乗馬大会で会っているんです。当時の先生から「あの子もジョッキーを目指しているんだよ」って教えてもらってすごく印象に残っていて。 藤田:瑠星と挨拶をして「細いな~~~!」と思ったことは覚えています。それ以外はあんまり覚えてなくて(笑) 坂井:なので3人全員での初対面は2次試験の時でしたね。3泊4日で、乗馬の技術から生活態度や体力などを見られるものでした。 荻野:物凄い緊張している中、菜七子が面接室へ小走りで入っていったのをよく覚えてる! 藤田:極は面接室から裸足で出てきてたよね(笑) 荻野:面接で特技を披露する流れになって空手をやったからだね(笑) 坂井:僕もそれを人づてに聞いて「空手の子がいるんだ~」とぼんやり思ったのを覚えています。 編集部:みなさん無事に二次試験を合格し、競馬学校での生活がスタートしましたが、そこでの生活はいかがでしたか? 荻野:楽しむ余裕が無かったです。乗馬経験が一番少ないこともあり、みんなに追いつかなくちゃという焦りがあって「頑張らなきゃ」と毎日、苦しい気持ちでした。 藤田:私も3年間がすごく長かった。毎日毎日、先が見えないなあと思っていました。 坂井:僕は楽しかった! 他のスポーツと違ってなかなか自主練が簡単に出来るものではないので、やりこめる環境にいられるということがすごく嬉しくて。上達していく感じや手応えも少しずつですが感じられました。 編集部:学生時代は寮生活でしたが、休日はどう過ごされていましたか? 藤田:私は小説など、本を読んですごしていることが多かったです。あと自転車でお菓子屋さんに行ってました(笑)当時は和菓子がすごく好きで、どら焼きやかりんとう饅頭を買っていましたね。今でも時々、食べます。 荻野:みんな学生時代の時はお菓子をよく食べていたよね! 坂井:お菓子ロッカーっていうのがあって、外出できる日曜にそれぞれ買い出しに行って1週間分をそこにいれておくんです。僕は大きなアイスをよく買っていたなあ。 藤田:あれはすごく性格が出て、私は月曜にこれを食べて、火曜にはこれと配分するタイプだったんですが、極はいつも週の前半にはお菓子がなくなっていたよね(笑) 荻野:ひどいときには日曜日に買ったものが、日曜日になくなっていました(笑) かけがえのない互いの存在。そして6年目の決心 編集部:学生生活から数えると今年で9年目の付き合い。改めてお互いのことををどう思っていますか? 坂井:極は今でも一番仲が良くて、毎日いても飽きない恋人のような親友ですね。僕は自分のレースの次に極のレースを見ているぐらい(笑)技術的に見習うところも多いです。 藤田:今日もそうですが、極はいつ会っても明るくて元気をもらえる存在。同期の中でも盛り上げ担当だね! 坂井:菜七子はジョッキーとしてもすごいし、それ以外でも仕事も忙しい中メディアに出て競馬界を盛り上げてくれたり、すごく感謝していて“ありがとう”の気持ちが強いです。 荻野:そして同期の中でもアイドル的存在(笑)ギャップもあって普段は可愛い女の子なんだけど、レースの時は気が強い! すごく自立していてなんでも自分でやろうとするし、そして出来ちゃう子。あんまり学生の時から人に相談したりしてなかったよね? でも傷つきやすかったりする一面もあるね。 坂井:そうそう。菜七子は「意外と!」が多いかも。 荻野:瑠星はイケメンで、頭も良くて、競馬や馬の知識も豊富で…。ミスターパーフェクトなんじゃないかな?ちょっと諸々を少し分けて欲しい!(笑) 藤田:欠点がないタイプだよね。同期の中でもダントツのストイックさ。尊敬しています。 編集部:それぞれ卒業後、ご活躍されていますが、お互いのレースを見て印象に残っているものはありますか? 坂井:菜七子はコパノキッキング!勝負服からレースぶりまで何もかもが印象的。 荻野:「菜七子といえば!」っていうぐらいだよね。瑠星はジャスティンとのコンビかなあ〜。 藤田:私はダノンファラオで交流G1を勝ったのがすごく印象に残っている。同期で初だったし、大穴だったし。 坂井:極はアキトクレッセントだね。調教もずっと乗っていたよね。 荻野:当時所属している厩舎の馬で。女の子好きな気分屋と、ちょっとクセのある馬だったんですが確かに自分の中でもすごく印象に残っている一頭です。 編集部:デビューして今年で6年目。みなさん、どう感じていますか? 藤田:あっという間! もっと上達しなきゃという気持ちです。 坂井:想像していた6年目は、もっと上手くやれているんだろうなと思っていました。なので想像と現実は違うなと。優秀な後輩もたくさんいるし、僕も負けずにこれからも頑張りたいなと思っています! 荻野:僕は情けないかな。思ったような結果を出せていなくって…。頑張ります! 坂井:出来るよ、極なら! 3人へ質問! 一番○○な人は誰? Q一番負けず嫌いなのは誰? 荻野:菜七子!競馬で負けると機嫌が悪い!(笑)怒ってるのが顔に出てるよね(笑)藤田:自覚があります(笑) 坂井:基本的にはみんな負けず嫌いだよね? 荻野:僕もそう!競馬もだけどゲームで負けるのも悔しい(笑)Q一番面白いのは誰?坂井&藤田:極!坂井:15歳で初めて会った時からずっと面白いです(笑)Q一番よく食べるのは誰?坂井:これも極です!荻野:お米、麺、肉が好きですね。菜七子は少食。瑠星は食べるのが遅い(笑)Q一番変わっているのは?荻野:菜七子かな~。掴みどころがないからね。藤田:え~そうかなあ?私は極だと思うけどね。あんまり人が考え付かないことを言うし。 坂井:確かに着眼点がいつも違う! 久々の再会だったという取材日当日。終始リラックスムードで、互いの姿をスマホで撮ったり、冗談を言い合ったりと、3人の仲の良さや絆を自然と感じるような現場となりました。若干23歳にして、毎週末真剣勝負の世界に身を置く彼らの今後にも是非、注目してみて下さい。 撮影/柴田フミコ ヘアメイク/田中陽子<Lila> スタイリスト/松尾正美(藤田さん分) 取材・文/倉田明恵<BAILA編集部> ▼こちらもチェック! 【藤田菜七子さん】大人気女性騎手に一問一答!今年の目標を直筆で公開♡ 【荻野極さん】注目若手騎手に一問一答!今年の目標は「○○○を増やしたい」 【坂井瑠星さん」2021年の大注目騎手に一問一答!今年の目標は○○の制覇!1月12日
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長引くおうち時間に自己研鑽。最近読んだおすすめ本をご紹介します。MIKIです。緊急事態宣言が出された上に、年末年始からの寒波で寒いのが苦手な私はますます引きこもり生活が続いています。もともと、読書は大好きですが最近は子育てや仕事をフルタイム復帰したことで読書量が減っていましたが、お正月休みからこの連休にかけては久しぶりにゆっくり読書を楽しみました。文学小説から仕事柄経済に関する本まで様々なジャンルの本を読みますが、最近読んだ中で特におすすめの本をご紹介したいと思います。左上:NeoLifehack 勝間和代著右上:勝間式超スローライフ 勝間和代著左下:日本への警告 ジムロジャース右下:Auオードリータン天才IT相7つの顔 アイリフチュウ著まずは、勝間和代さんの本を2冊。経済評論家のイメージが強い勝間さんですが、時間効率主義者としても有名です。私がそれを知ったのも、4月の緊急事態宣言中に読んだ「ラクして おいしく、太らない! 勝間式超ロジカル料理 」がきっかけでした。この本がきっかけで、ホットクックを買いその後仕事復帰し本当に助けられました。それ以来、勝間さんの本を以前に増して読むようになりました。『NeoLife hack』人生の幸福度を上げるために、目標達成・時間管理・インプットアウトプット・お金・思考法・人間関係・片付け料理・健康の観点から全てを最適化する方法が書かれています。仕事・育児・趣味にと大忙しなアラフォー世代に特におすすめ!忙しい毎日をちょっとした行動や考え方でスッキリと交通整理できる1冊です。『自由もお金も手に入る!勝間式超スローライフ』アフターコロナで、驚くほど幸福度が上がったという考えの勝間さん。持続可能な働き方、労働時間を短く、自宅を世界一快適にして穏やかに暮らすための方法について書かれています。私自身、コロナ禍の中で仕事復帰し、働きが180度変わりました。そして、以前に比べずいぶん働きやすい環境になりました。コロナになり、外出は自粛、大勢での食事はできない、旅行にもいけないとネガティブに考えがちですが、一方でコロナになったからこそ変化した新しい考え方や習慣 共感すべきところが多いです。『Anオードリータン 天才IT相7つの顔』コロナウイルスが全世界を席巻するなか、いち早くマスクマップアプリを開発し世界に名を馳せた台湾のデジタル担当オードリータン。日本ではマスクが品切れで買えない中、当時大変話題になりましたよね。彼の経歴は、IQ180、学歴は中卒、独学でプログラミングを学び、シリコンバレーで成功した起業家、1ページ0.2秒で資料を読む、トランスジェンダー。そんな彼の生い立ちを二人のジャーナリストが解説しています。ニューノーマルな時代を生きるためのヒントが書かれています。『日本への警告』 世界的に有名な投資家ジムロジャースの「日本への警告」少子高齢化と巨額の長期債務残高を放置している日本。私たちアラフォー世代はなんとか生き延びることができても、子供達の未来はどうなるのか?といつも考えていましたが・・・ジムロジャースが今日本に住んでいたら、トラクターを買って農業をするか、子供達に中国語を学ばせたいと解説しています。今の日本の現状を知ることはもちろん、これからの日本を担う子供達にどんな教育をするべきか?を考えさせられる内容です。どの本も学ぶべき事が多くとても刺激になりました。長くなってしまいましたが、お読みいただきありがとうございました。長引く自粛生活。ストレスが溜まることも多いですが、充実したおうち時間になるといいですね。1月10日
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12星座全体の運勢「裸のまんま」 2021年の最初の満月は「大寒」と「立春」のはざまにあたる1月29日、寒さのもっとも厳しくなる時期です。とはいえ、雪の間から蕗の薹が顔を出し、鶏が卵を産み始める頃ともされており、どこか新たな希望も兆していきます。 そんな今回のしし座満月のテーマは「ゾーエー」。これはギリシャ語で「剝き出しの生」の意味で、「社会的な生」である「ビオス」との対比で用いられる言葉です。両者はふだん区別がつかないように縫い合わされており、特につねに何かしていなければ落ち着かない現代人にとっては、前者はほとんどの場合、「私は〇〇をしています」とか「●●という会社に勤めています」といった後者の在り方に覆い尽くされているように思います。 しかし、立春が一年の節目であった旧暦では、立春前はいわば一年の穢れを祓う年越しの時期でもあった訳で、そのタイミングで迎える満月はいつの間にか見失いがちな「ゾーエー」、すなわち、できる限り身にまとっていた虚飾を脱いで、余計なこともせず、何もしないでただ在ること(being)のありがたみやその効用について思い出していくには、絶好の機会と言えます。 じつは節分の豆まきも、もともとは年越しの行事でした。今では節分は立春の前日一日だけの行事になってしまいましたが(2021年の節分は2月2日)、邪気を祓って幸せを祈る気持ちは変わらないはず。今期の満月前後の数日間は、ひとつそんな気持ちでただ存れるよう、試みてみるといいでしょう。 蟹座(かに座)今期のかに座のキーワードは、「私をめぐる切り絵作業」。 19世紀末から20世紀初頭にかけて生きたポール・ヴァレリーは「9歳か10歳のころ、わたしは自分の精神の島とも言うべきものをつくり始めたにちがいない」と書いているように、ある種の隠遁主義者であり、自分自身の精神をより積極的に発現させるための「方法」として、自分の分身エドモン・テストを巡る思索を手紙・日記などを含めた特異な連作小説『テスト氏』を生涯にわたって書き続けました。 「私は自分を自分が現実に所有している諸特性に還元しようと試みていた。自分の能力に対してはほとんどなんの信頼ももてなかった。ところが一方、自己嫌悪に必要なものなら、何でも自分の中になんの造作もなく見つかった。だがしかし、私は明晰さを求める自分の限りない欲求や、信念や偶像に対する侮蔑や、容易さへの嫌悪やおのれの限界を感じつづける力などには頼むところがあった。私は、自分の中に一つの内部の島をつくりあげ、それを踏査し強化することに時を費やした…。」 こうしてヴァレリーはテスト氏によって眺められた「自分」を綴っていった訳ですが、ヴァレリーにとって自分とは、まさに「自分と自分のあいだ」にいるものであり、そこで「第一になすべきは、おのれの領地を経めぐることだ」として、私が体験しうるあらゆる可能的世界としての「広義の私」の中から、現に体験したこととしての「狭義の私」を切り絵のように切り抜いていったのです。 そうしてヴァレリーは「狭義の私」でさえも、決して固定されたものではなく、たえず開いており、意味づけを求めているものであることに気付いて、その狭い国土で繊細極まりない自己探求を続けていきました。 今期のかに座のあなたもまた、それくらい割り切って手足が届く範囲内の「狭義の私」体験を踏査し、強化していくことを優先してみるといいかも知れません。 参考:ポール・ヴァレリー、粟津則雄訳『テスト氏』(福武文庫) 12星座占い<1/10~1/23>まとめはこちら<プロフィール>應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。文/SUGAR イラスト/チヤキ1月10日
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[目次] 【SUGARさんの12星座占い】<1/10~1/23>の12星座全体の運勢は? 【SUGARさんの12星座占い】12星座別の運勢 《牡羊座(おひつじ座)》 《牡牛座(おうし座)》 《双子座(ふたご座)》 《蟹座(かに座)》 《獅子座(しし座)》 《乙女座(おとめ座)》 《天秤座(てんびん座)》 《蠍座(さそり座)》 《射手座(いて座)》 《山羊座(やぎ座)》 《水瓶座(みずがめ座)》 《魚座(うお座)》 【SUGARさんの12星座占い】<1/10~1/23>の12星座全体の運勢は?「裸のまんま」 2021年の最初の満月は「大寒」と「立春」のはざまにあたる1月29日、寒さのもっとも厳しくなる時期です。とはいえ、雪の間から蕗の薹が顔を出し、鶏が卵を産み始める頃ともされており、どこか新たな希望も兆していきます。 そんな今回のしし座満月のテーマは「ゾーエー」。これはギリシャ語で「剝き出しの生」の意味で、「社会的な生」である「ビオス」との対比で用いられる言葉です。両者はふだん区別がつかないように縫い合わされており、特につねに何かしていなければ落ち着かない現代人にとっては、前者はほとんどの場合、「私は〇〇をしています」とか「●●という会社に勤めています」といった後者の在り方に覆い尽くされているように思います。 しかし、立春が一年の節目であった旧暦では、立春前はいわば一年の穢れを祓う年越しの時期でもあった訳で、そのタイミングで迎える満月はいつの間にか見失いがちな「ゾーエー」、すなわち、できる限り身にまとっていた虚飾を脱いで、余計なこともせず、何もしないでただ在ること(being)のありがたみやその効用について思い出していくには、絶好の機会と言えます。 じつは節分の豆まきも、もともとは年越しの行事でした。今では節分は立春の前日一日だけの行事になってしまいましたが(2021年の節分は2月2日)、邪気を祓って幸せを祈る気持ちは変わらないはず。今期の満月前後の数日間は、ひとつそんな気持ちでただ存れるよう、試みてみるといいでしょう。 《牡羊座(おひつじ座)》(3/21〜4/19)今期のおひつじ座のキーワードは、「閑暇の時代」。 フランス革命に大いに影響を与えたジャン=ジャック・ルソー(1712~1778)は、最晩年の随筆集『孤独な散歩者の夢想』の中で、自分の人生の分岐点となった決断を振り返って次のように書いています。 「僕は青春の頃からこの四十歳という時代に目標をおいて、これを自己完成への最後の努力のときであり、自分のあらゆる抱負の終了期であると定めておいたのである。この年齢になったら、自分がいかなる境遇にあっても、それから逃れようなどともがくことはしまい、余生はのんびりしよう、そして、未来のことなどくよくよしまい、こう固く決心していた。その時は来たのである。僕はこの計画を難なく遂行した」 実際にルソーは40歳を前に定職を辞し、楽譜の清書の仕事だけで生きていく(今でいうフリーランス)生き方へと転換し、それと時期を同じくして『学問芸術論』や『人間不平等起源論』などの主著を次々と発表し、思想家としての地歩を固めていきました。そしてそんなルソーの脳裏にあったのは、青春の盛りを過ごした田舎の閑静な生活でした。 「閑居における瞑想、自然の研究、宇宙の観察は、いきおい、孤独者をして、造物主の方にたえず向かわしめて、自分の目に映るあらゆるものの目的と、自分の心に感ずるあらゆるものの原因を、こころよい不安の念をもって探求せしめたのであった。運命が再び僕を世の風潮の中に投げ込むにおよんで、僕は、一時たりとも心を慰めてくれるような何物ももはやそこには見出さなくなった。そして、あの楽しかった閑暇の時代をなつかしむ心は、その後の僕にどこまでもつきまとってきて、幸運や栄達が得られるような、どんな手がかりが目の前に現れても、無関心と嫌悪を投げつけるのみだった」 今期のおひつじ座もまた、ルソーのように自身に十分なヒマで心しずかでいられる時間を与えてやることがテーマとなっていきそうです。 参考:ルソー、青柳瑞穂訳『孤独な散歩者の夢想』(新潮文庫) 《牡牛座(おうし座)》(4/20〜5/20)今期のおうし座のキーワードは、「新たな数式/死者の息づかい」。 詩人の岸田将幸は「孤絶-角」という名の詩集の冒頭を、次のように書き出しました。 「まったく人のいない場所の発見、 人が生き得る“呼吸場”―――。 (呼吸広場、) “孤絶角” 、は 孤絶角度とそれぞれのではない空間によって成り、 時間は“無限振動”=共振のあいだに留まる水量によって測られる」 最初に読んだとき、これはまったく不可解な使命感に駆られた人が、その孤独のなかで慈悲深い絶望や、極限の関係に開かれていった際の感覚をなんとか表そうとしたもののように思えました。そしてこの詩のすぐ後には、今度は散文が続きます。 「新たな数式を生まねばならない。きっとそれは次の人がぎりぎり踏み外すことのない足場になるはずだ。その数式は彼を沈黙させ、彼はしばらく別のところで生きて行かなければならなかったかもしれない。しかしだ、その別の場所を育んだのはある死者の息づかいの跡であったかもしれない。そうして彼はある死者の跡を引き受けつつ、また別の人を生かしめるために別の場所に立ったのかもしれない。」 ここで言う「新たな数式」とは、例えば私たち一人ひとりによって未知の感情が発見されていったプロセスであり、さながら星と星とを結んで作られた夜空に浮かぶ無数の星座のようなものとも言えます。 そしてそれらは、死者から生者へ、そしてまた次の生者へと、何十代何百代にもわたり、膨大な時間をかけて引き継がれていくものであり、そういうものを私たちは「孤絶」のなかでこそ受けとっていくことができるのではないでしょうか。 今期のおうし座もまた、あるいは自分なりの「数式」を生み出していくための足がかりを見つけていこうとしているのかも知れません。 参考:岸田将幸『岸田将幸詩集』(思潮社) 《双子座(ふたご座)》(5/21〜6/21)今期のふたご座のキーワードは、「ミソ・ドラマ」。 河合隼雄の『こころの最終講義』に、非行少年のセラピーにミソ・ドラマ(神話劇)を使っているアラン・グッゲンビュールという人の興味深いエピソードが紹介されています。 まずはじめに非行少年たちに部屋に集まってもらって、軽く名前を言い合ったり、お菓子を食べたりしつつ、みんなどこでも好きなところへ寝っ転がってもらったりして、身体をものすごくリラックスしてもらうのだそうです。そして、だいぶほぐれてきたなというところで、神話的な話をする。 例えば、向こうから怪物が現れたとか、運命的な試練の旅に出なければいけなくなったとか、そういう神話的な状況を話して、途中でやめる。やめて、リラックスしている子供たちに、続きを考えて話をさせたり、劇をやってもらったりすると、非常に乗ってくる子が多いのだと。その際、特に印象的だったのが次の下りです。 「そのときに行儀のよい話をするとみんな行儀が悪くなる。つまり「昔むかしよい子がおりました。朝からお母さんの言いつけ通りに仕事をしました」などというと、みんなウワーッてむちゃくちゃする。ところが、むちゃくちゃな話、つまり怪物が出てきたので怪物をボカンとやっつけたとか、そういう途方もない話をすると、みんなすごく行儀がよくなる」 そもそも日常の枠におさまらず、それを超えようとした行為をやっているから「非行」少年な訳です。それは自分なりの物語を発見しようとしてそうしているのですが、うまくいかない。それをこういうやり方でうまく自分で探せるよう、取っ掛かりとつかめるよう、想像の世界を活性化させてやる。最初のひとなぎ、ふたなぎをこちらでやると、後は子供たちも自分でやりたくなる。そして最後に部屋を変えて、お菓子を食べたりしてもらいつつ、だんだん現実に戻していく。これはとてもうまいやり方ですね。 今期のふたご座もまた、どうか行儀のよい話ではなく、できるだけむちゃくちゃな話、途方もない話に触れていきたいところです。 参考:河合隼雄『こころの最終講義』(新潮文庫) 《蟹座(かに座)》(6/22〜7/22)今期のかに座のキーワードは、「私をめぐる切り絵作業」。 19世紀末から20世紀初頭にかけて生きたポール・ヴァレリーは「9歳か10歳のころ、わたしは自分の精神の島とも言うべきものをつくり始めたにちがいない」と書いているように、ある種の隠遁主義者であり、自分自身の精神をより積極的に発現させるための「方法」として、自分の分身エドモン・テストを巡る思索を手紙・日記などを含めた特異な連作小説『テスト氏』を生涯にわたって書き続けました。 「私は自分を自分が現実に所有している諸特性に還元しようと試みていた。自分の能力に対してはほとんどなんの信頼ももてなかった。ところが一方、自己嫌悪に必要なものなら、何でも自分の中になんの造作もなく見つかった。だがしかし、私は明晰さを求める自分の限りない欲求や、信念や偶像に対する侮蔑や、容易さへの嫌悪やおのれの限界を感じつづける力などには頼むところがあった。私は、自分の中に一つの内部の島をつくりあげ、それを踏査し強化することに時を費やした…。」 こうしてヴァレリーはテスト氏によって眺められた「自分」を綴っていった訳ですが、ヴァレリーにとって自分とは、まさに「自分と自分のあいだ」にいるものであり、そこで「第一になすべきは、おのれの領地を経めぐることだ」として、私が体験しうるあらゆる可能的世界としての「広義の私」の中から、現に体験したこととしての「狭義の私」を切り絵のように切り抜いていったのです。 そうしてヴァレリーは「狭義の私」でさえも、決して固定されたものではなく、たえず開いており、意味づけを求めているものであることに気付いて、その狭い国土で繊細極まりない自己探求を続けていきました。 今期のかに座のあなたもまた、それくらい割り切って手足が届く範囲内の「狭義の私」体験を踏査し、強化していくことを優先してみるといいかも知れません。 参考:ポール・ヴァレリー、粟津則雄訳『テスト氏』(福武文庫) 《獅子座(しし座)》(7/23〜8/22)今期のしし座のキーワードは、「これでいいのだ」。 漫画家の赤塚不二夫さんの告別式が2008年8月7日、東京都中野区の宝仙寺で営まれた際、彼を「肉親以上の存在」と慕っていたタモリ氏は、次のような弔辞を読みました。 「あなたの考えは、すべての出来事、存在をあるがままに、前向きに肯定し、受け入れることです。それによって人間は重苦しい意味の世界から解放され、軽やかになり、また時間は前後関係を解き放たれて、その時その場(瞬間)が異様に明るく感じられます。この考えをあなたは、見事に一言で言い表しています。すなわち、「これでいいのだ」と。」 極度の恥ずかしがり屋で、何度入退院を繰り返しても人と会うのに酒とタバコをやめられなかった生前の赤塚氏の行状は、一見でたらめなものではありましたが、タモリ氏が言うように、そこには何の変哲もない日常に永遠の幸福を宿らせる一瞬が確かにあり、それを彼の周囲にいたたくさんの人たちが「異様に明るく」なる瞬間として直接体験していたのでしょう。 もちろん、普通に考えれば食道がんで長期入院した後も酒を飲み続けたりすれば、「これでいいわけがない」のですが、それでも私が生きて在るという事実そのものを消し去ることは誰にもできませんし、その前にも後にも生というものはないのだと肯定するとき、その人は永遠に通じている生の瞬間を全力で生きている。他ならぬ赤塚氏は、そのことをどこまでも素直に実行できた人だったように思います。 その意味では、ゾーエー(非意識的生命性)と言ったって、別に難しいことを考えたり行なったりする必要はなくて、よく眠ること、よく食べること、よく歩くこと、よく話すこと、よく愛すること、これらはすべて、確実に幸福の条件なのだということが分かります。 今期のしし座は、そうやって喪ったいまを改めて取り戻していくことができるかが問われていくでしょう。 参考:『文芸春秋 2011年1月号』 《乙女座(おとめ座)》(8/23〜9/22)今期のおとめ座のキーワードは、「空気への参与と構築」。 イタリアの哲学者コッチャは、『植物の生の哲学』のなかで、「数百万年もの昔、動物的生命の可能性の条件を産み出し、世界を変容させたのは、他ならぬ植物だった」と前置きした上で、古代ギリシャのアナクサゴラスの「すべてがすべてのもとにある(パン・エン・パンティ)」という<混合>ないし<相互浸透>としての世界像をめぐって次のように述べています。 「「植物新世」こそが、世界が混合であること、そして世界のあらゆる存在は、世界がその存在の中にあるのと同じだけの強さをもって世界の内にあるということの、最も明確な証左なのである。」 ここで言及されている「混合」とは、世界においてあらゆるものが相互に浸透し合い、循環し、伝達しあっているという世界像のことであり、そこには時に私たちがプライベートや私有地という仕方で想像する空間的な不可入性はじつは幻想に過ぎないのだという指摘も含んでいます。 また、「植物新世」という言葉は明らかに、人間の活動が地球に地質学的なレベルの影響を与えていることを表す「人新世」という昨今よく耳にするようになってきた言葉を意識して書かれた記述でもありますが、コッチャはこの点についてもきちんと警鐘を鳴らしています。 「人新世という概念は、世界の実在それ自体を定義づけるものを、単一の営為、歴史的で否定的な営為へと変形してしまう、つまり自然を文化例外に、また人間を自然外の原因にしてしまうのだ。その概念は、とりわけ世界が常に生物の呼吸の現実をなしている事実を、顧みようとしない。」 つまり、コッチャのいう混合的世界像とは、すなわち世界は呼吸するということであり、世界に在るとは、つねに自然と人間、男と女、内と外、過去と未来など、あらゆる境界線を越えた超越的な「浸り」に参加するということに他ならないのです。 今期のおとめ座もまた、そうした息吹や空気の構築に参与していくという視点から、現在のコロナ禍を生きるということについて、考え直してみるといいでしょう。 参考:コッチャ、嶋崎正樹訳『植物の生の哲学』(勁草書房) 《天秤座(てんびん座)》(9/23〜10/23)今期のてんびん座のキーワードは、「うつろいやすさと漂泊」。 パレスチナ出身の批評家、研究者であるエドワード・サイードは、自ら選択したのではなく授けられた名前のなかに、すでに英国王子に因む名でアングロ文化・英語文化への関係を象徴する「エドワード」とアラブ世界を象徴しつつ出自についての曖昧さを残す家系名である「サイード」という折り合いえない違和を含んでいました。 彼は亡命やディアスポラ(故郷の喪失と離散)の状況を、例えばユダヤ人の2000年にわたる歴史のような現実から比喩の領域へと展開させながら、自身の立場を示すべく、知識人の使命について次のように語りました。 「知識人が、現実の亡命者と同じように、あくまでも周辺的存在であり続け飼い馴らされていないでいるということは、とりもなおさず知識人が君主よりも旅人の声に鋭敏に耳を傾けるようになること、慣習的なものより一時的であやういものに鋭敏に反応するようになること、上から権威づけられて与えられた現状よりも、革新と実験のほうに心を開くようになることなのだ。漂泊の知識人が反応するのは、因習的なもののロジックではなくて、果敢に試みること、変化を代表すること、動き続けること、けっして立ち止まらないことなのである。」 これは知識人論でありながらも、同時に脱西欧化され、非中心化された「世界市民」としてのひとつの思考と行動の原理を新たに打ち立てようとする試みでもあるように思います。 ここのところ占星術界隈でバズっている「風の時代」という言葉も、単に新たな文化適応に向かうのではなく、彼の語る知識人のように、むしろ「うつろいやすさと漂泊のなかにとどまり続けること」の実践の中で、はじめて実感を伴ってくるのではないでしょうか。 今期のてんびん座は、そんな新たな時代の風通しを身をもって体感していくことがテーマとなっていきそうです。 参考:エドワード・サイード、大橋洋一訳『知識人とは何か』(平凡社ライブラリー) 《蠍座(さそり座)》(10/24〜11/22)今期のさそり座のキーワードは、「贈与以前の贈与」。 この時期の冬のいちばん寒い頃合いには、東の空にちいさな炎のかたちを作ってみせるプレアデス星団、すなわちおうし座の背中にかがやく鎖状の星の群れが肉眼でも観察できます。 そしてこのプレアデスは、しばしば人間的な知力や意志の力を超えた天地の根本の文脈で象徴的に取り上げられてもきました。例えば、旧約聖書の『ヨブ記』において、エホバ(至高者)が理不尽な試練の連続のなかでついに神への疑惑と憤怒を口にした義人ヨブに対して次のように語った有名な場面。 「わたしが地の基をすえた時、あなたはどこにいたか。もしあなたが知っているなら言え…… 死の門をあなたのために開けられたか。 あなたは暗黒の門を見たことがあるか。あなたは地の広さを見きわめたか…… だれが大雨のために水路を切り開き、いかずちの光のために道を開き、 人なき地にも、人なき荒野にも雨を降らせ、 荒れすたれた地をあき足らせ、これに若草をはえさせるか。 雨に父があるか。露の玉はだれが生んだか…… あなたはプレアデスの鎖を結ぶことができるか。オリオンの綱を解くことができるか。 あなたは十二宮をその時にしたがって、引き出すことができるか。 あなたは天の法則を知っているか、そのおきてを地に施すことができるか。」 ここでいう「鎖」とは、幾世代にもわたって生命が受け継がれていく大いなる生命の連鎖の象徴とも解釈することができますが、その意味で、語り手であるエホバ(至高者)は東洋的に言えば、「父母未生以前の自己」であり、ここで語られている内容は、私たち人間が誰か何かにみずから恵みを与えていく贈与以前の贈与とも言えるのではないでしょうか。 今期のさそり座は、そうした既に自分が受け取っている贈与以前の贈与ということに思いを巡らせてみるといいかも知れません。 参考:関根正雄訳『旧約聖書 ヨブ記』(岩波文庫) 《射手座(いて座)》(11/23〜12/21)今期のいて座のキーワードは、「死角の発掘」。 視覚障害者の空間認識、感覚の使い方について迫った『目の見えない人は世界をどう見ているか』という本の中で、美学と現代アートを専門とする著者の伊藤亜紗は、「見えない人が見える人よりも空間を大きく俯瞰的にとらえている場合がある」という一般的なイメージとは真逆の現実に触れています。 これは見える人は遠くまで「見通す」ことができるので、そこで見える坂道だったり、まわりの風景、空が青いとか、遠くにスカイツリーが見えるとか、そういうことに気を取られてしまう。だから、「かえって見えない人の方が、目が見通すことのできる範囲を越えて、大きく空間をとらえることができる。視野を持たないゆえに視野が狭くならない」のだと言います。 さらに著者は富士山や月のようなあまりに大きなものや遠くのものを見るとどうしても立体感が欠けてしまうなどの事例から、視覚の大きな特徴として「三次元を二次元化すること」を挙げ、「そもそも空間を空間として理解しているのは、見えない人だけなのではないか」と提起するのです。 つまり、私たちが身体を持っており、一度に複数の視点を持つことはできない以上、あくまで私の視点から見た空間しか捉えられず、空間をそれが実際にそうである通りに三次元的には捉え得ないという訳です。 そうして、著者はどうしても「欠落」としてとらえてしまいがちな「見えないこと」を、脳の内部に新しい扉が開かれ、世界の別の顔を感知するクリエイティビティの発露するチャンネルとして捉え直していくのですが、そのプロセス自体が驚くべき逆転の発想と言わざるを得ないでしょう。 その意味で、今期のいて座もまた、日常生活のなかでいつの間にかアウト・オブ・マインドになっていた死角領域を改めて発掘していくことがテーマとなっていきそうです。 参考:伊藤亜紗『目の見えない人は世界をどう見ているか』(光文社新書) 《山羊座(やぎ座)》(12/22〜1/19)今期のやぎ座のキーワードは、「土のなかのくらさ」。 詩人・牟礼慶子の「見えない季節」という詩に、「土のなかのくらさ」という大変印象的なフレーズが出てきます。 「できるなら 日々のくらさを 土のなかのくらさに 似せてはいけないでしょうか 地上は今 ひどく形而上学的な季節 花も紅葉もぬぎすてた 風景の枯淡をよしとする思想もありますが ともあれ くらい土の中では やがて来る華麗な祝祭のために 数かぎりないものたちが生きているのです その上人間の知恵は 触れればくずれるチューリップの青い芽を まだ見えないうちにさえ 春だとも未来だともよぶことができるのです」 冬の大地は、一見のっぺらぼうで、何もしていないように見えますが、春になるといっせいに芽が出て、撒いたわけでもないものまで一緒になって、草木ぐんぐん生えてきます。そこに至るまでの冬のあいだ、土のなかでどんなドラマが進行していたのか。 自然だけでなく人間の暗さがはらんでいる未来にも、そっと手を添えてくれるような牟礼慶子の詩行に触れていると、改めて地下世界にひしめいている予兆にスッと目が開かれていくようです。 今期のやぎ座もまた、風の時代になった今こそ、自身のなかの豊かさ予兆をはらんだ土のなかの暗さを改めて実感していきたいところです。 参考:牟礼慶子『魂の領分』(思潮社) 《水瓶座(みずがめ座)》(1/20〜2/18)今期のみずがめ座のキーワードは、「媚態の霊化」。 九鬼周造が長きにわたるヨーロッパ留学時代に「寂しさ」と「恋しさ」とは何かということをしきりに考えた末、帰国後すぐに書き上げたのが『いきの構造』でした。 この本を読んでいると、例えば「理想主義の生んだ「意気地」によつて媚態が霊化されてゐることが「いき」の特色である」なんていう一文が出てきますが、ここで言う「意気地」というのは一種のコンプレックスなんですよね。 つまり「女としてor男としてこうありたい」という理想に対してどこか鋭い緊張感を抱いていて、それがただただ意中の相手に甘くなったりデレデレと弛緩しきってしまうような「媚態」に冷や水を浴びせ、精神的に高まったところへ引き上げていくことを、「媚態の霊化」と言っている訳です。 こうやってきちんと矛盾や葛藤を前提として「いき」という俗なる美意識を語っているところなど、やはり理論というものは実生活に浸透されてはじめて力が出てくるもので、口先だけでカッコよく決めてもしょせん頭の中の自己満足なのだと思い知らされる気がします。 その意味では、今期のみずがめ座もまた、自分なりの情熱をどれだけ「いき」に表していけるかどうかが問われていくでしょう。 参考:九鬼周造『いきの構造』(岩波文庫) 《魚座(うお座)》(2/19〜3/20)今期のうお座のキーワードは、「自発的変化の喚起」。 整体という言葉を初めて使い始めた整体指導者の野口晴哉は、12歳で被災した関東大震災時に本能的に手をかざして治療をしたことをきっかけに、治療家を目指し、以来さまざまな試行錯誤や研究の結果、「野口整体」という自身のメソッドを確立し、その天才的手腕で治療や指導に長年携わってきました。 その死後に出版された『偶感集』は、ごく簡潔かつリズミカルな文体で氏の治療思想の根幹を語ったもので、中でも「心理指導」と題された一篇は、どうしたら心身の不調と向き合うべきかという治療家としての姿勢の指針について述べられています。 「生きているということ リズムによる也 そのリズムを調えること 安心立命の道也 如何にして調えるか リズムによる也 心も又リズム也 言葉も又リズム也 運動も又リズム也 一切の行為をリズムを調えるよう使う也 その為にリズムを使いこなすこと必要也」 ただ機械のようなのっぺりとした声色や単調すぎる動作では治療にならない、氏はそう考えた上で、上下する波としてのいのちあるものにどう接するべきかを次のように大胆に語ります。 「生くる波の高低 見極むることまず必要也 心の動き 又この波による也 この波に応じて手段選ぶべきは勿論也 高まれる時はヒントを与えるのみにて独り動く しかも繰り返せば逆効果也 低まれる時は形つくりて与うべく 高まれる時は奪ふことその要也 いつも与うるは息吐く時 奪うは吸う息によるべし 与奪は変化のため也 与奪のために非ず 自発的な動きを喚起するために要るは変化也 心理指導は自発的変化喚起の術也」 ほとんど武道の世界ですが、古来から達人は活殺自在と言うように、相手を殺すことと活かすことは表裏一体であり、その紙一重の使いどころを誤ることなく実行できる呼吸こそが、達人の達人たる由縁だったのでしょう。 今期のうお座もまた、そうした呼吸の要を意識した上で、自身や周囲を活かすための動きをしていけるかが問われていきそうです。 参考:野口晴哉『偶感集』(全生社) --------占いの関連記事もチェック--------ゲッターズ飯田の「2021年五星三心占い」(無料)イヴルルド遙華の「2021年 MYポジティブポイント占い」(無料)ルネ・ヴァン・ダール研究所のMORE HAPPY 占い(無料)365日お誕生日占い(無料)文/SUGAR イラスト/チヤキ1月10日
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アラフィー女性にこそ読んで欲しいおすすめの本を、編集部がピックアップ! 温 又柔さんと木村友祐さんが交わす往復書簡『私とあなたのあいだ』、読了後に静かな感動を覚える短編集『八月の銀の雪』など、新年から新たな気持ちで読みたい4作をセレクト。もがきながら紡いだ作家たちの往復書簡『私とあなたのあいだ』温 又柔 木村友祐明石書店 ¥1,700台湾で生まれ日本で育った温さんと青森出身の木村さん。ふたりの作家が1年半近く手紙を交わし、思索を深めていく。持てる者と持たざる者、日本人と在日外国人、健常者と障がい者、被災者と災害を知らない者、人間と動物……。対立して見える項目の“あいだ”に横たわるグラデーションを掘り下げることで、“誰もが楽に呼吸できる場所”を築く手がかりを探し求める。自身の弱さをさらけだし愚直なほど真摯に紡がれた言葉は、きっとあなたの心の奥底にも届くだろう。脱アンチエイジングで楽しもう、新しい「BBA道」『日々是混乱』地曳いく子ホーム社 ¥1,400還暦を迎えても第一線で活躍するスタイリストが、年齢に抗(あらが)わず今の自分を楽しむ新しい「BBA(ババア)道」を提唱。年を重ねたからこそのメイクやおしゃれ、旅友の選び方、心身のリセット法、変わりゆく自分や時代との向き合い方など、試したくなるアドバイスが満載だ。魂が動くスピードは体よりもずっと遅い!?『迷子の魂』オルガ・トカルチュク/文 ヨアンナ・コンセホ/絵小椋 彩/訳 岩波書店 ¥2,500慌ただしい日々の中で自分が空っぽになってしまったように感じたら、この絵本を開いてみて。忙しすぎる男が、いつのまにか置き去りにしていた魂を取り戻すまでの物語。ノーベル文学賞作家による文章と郷愁を誘う絵のハーモニーが、何もしない時間の豊かさに気づかせてくれる。静かな感動が心に降り積もる5つの物語『八月の銀の雪』伊与原新新潮社 ¥1,600コンビニで、満員電車で、季節はずれの海岸で、たまたま言葉を交わした他人同士。その小さな出会いが、彼らの心を覆う霧を晴らしていく。地球の中心に鉄の結晶が降り積もり続けているといった、科学的な記述がストーリーと絶妙にからみ合い、物語の深みと味わいを増している。原文/細貝さやか ※エクラ2021年2月号掲載1月6日
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俳優やその道のプロがYouTube界に続々進出 YouTube部門『佐藤健 / Satoh Takeru』俳優仲間とわちゃわちゃする“素”の佐藤健に惚れちゃって♡「俳優仲間と旅をする『TAKERU NO PLAN DRIVE』。終始漂うユルさが最高」(26歳・CA)、「神木隆之介くんがカメラを担当した、2021年のカレンダー撮影の裏側は必見。メイドカフェに困惑しつつも笑顔の健くんと楽しむ神木くんにキュン♡」(27歳・保険)2020年3月に開設。登録者数は、196万人。ドラマ『恋はつづくよどこまでも』で共演した、上白石萌音をゲストに迎えた第1回目の配信も話題に……!『仲里依紗です。』ポジティブパワーがギュッと詰まった規格外チャンネル!「仲里依紗節が炸裂してる! キティちゃんになりきってポップコーンを作る回は、かなりの衝撃でした(笑)」(28歳・広告)、「里依紗ちゃんの素すぎる(!?)姿を観ていると、元気が出る」(26歳・営業)、「夫婦、親子の絡みが面白い!」(25歳・飲食)2020年4月に開設し、仲里依紗自らが撮影、編集を行っている。爆買いしたアイテム紹介やメイク法、やってみた系など、動画のバリエーションは豊富『HIRO BEAUTY CHANNEL』プロのヘア&メイクアップアーティストが直伝! メイクが楽しくなる動画「第一線で活躍するヘア&メイクアップアーティスト・小田切ヒロさんのメイク解説は、とにかくわかりやすい。あまたあるコスメのイチ押しを教えてくれて、全部欲しくなります」(29歳・金融)、「品を感じるメイクテクニックを知りたくて、毎回チェックしています」(28歳・営業)ヘア&メイクアップアーティスト・小田切ヒロのビューティチャンネル。くずれないベースメイクのつくり方やデカ目メイクの方法、視聴者の質問に回答する動画などがあるひと言フレーズやキャラ芸人旋風が発生 COMEDY部門ぺこぱ間違いや失敗を前向きにキャッチ。スーパーポジティブ芸に共感殺到!「“ノリツッコまない芸”が新鮮! イヤなことがあっても、松陰寺さんの名ゼリフ“時を戻そう”を唱えると、気持ちがパーッと明るくなる。友達と多用してた」(26歳・商社)、「シュウペイさんのポンコツっぷりが愛おしい♡」(28歳・IT)(右から)松陰寺太勇、シュウペイ。2019年『M-1グランプリ』で3位を獲得し、話題に。キザキャラの松陰寺が発する“時を戻そう”のフレーズやシュウペイポーズが人気を博すかまいたち超実力派芸人の独特な世界観にハマって抜け出せない人が大量発生「ネタにハズレがない。ひな壇でも存在感があるし、司会もできるマルチプレーヤー芸人」(29歳・飲食)、「YouTubeにアップされた、瑛人さんの『香水』カバー動画が、予想外の内容で大爆笑。山内さんの話し方がツボです」(28歳・CA)(右から)濱家隆一、山内健司。2017年『キングオブコント』で優勝、19年『M-1グランプリ』で準優勝。20年2月に公式YouTubeチャンネル『かまいたちチャンネル』を開設EXIT共感を呼ぶ発言もたびたび話題に。枠におさまらない活躍を見せるEXIT!「ふたりともイケメン&ポジティブ名言製造機。底抜けの明るさに触れるとバイブスが上がる! ポンポンポーン(笑)」(26歳・営業)、「ファショナブルなところも魅力。一見パリピ男子だけど、根っこはいい人なのも◎」(25歳・不動産)(右から)兼近大樹、りんたろー。。“お笑い第7世代”の代表格。チャラ男漫才でブレイクし、レギュラー番組も多数。お笑いだけでなく、ファッションや美容分野でも注目の的雑談力を養える“聴く”ブーム到来中! RADIO&PODCAST部門『Creepy Nutsのオールナイトニッポン0(ZERO)』現在人気急上昇中のCreepy Nuts! リズミカルなトークで毎回、神回「ピュアで、ヒネくれてて、アツいふたりのトークを聴くと、ストレス発散できる!」(27歳・広告)、「DJ松永さんが、DJの世界大会で世界一を獲得した時の回は、胸がジーンとしたり、爆笑したり、感情が忙しかったです(笑)」(28歳・出版)DJ松永(右)、R-指定(左)からなるCreepy Nutsがパーソナリティ。ヒップホップユニットならではの言葉選びのセンスが際立つ会話が魅力。●放送時間/火曜深夜27:00〜28:30『オードリーのオールナイトニッポン』愛と毒のある若林さんの春日さんいじりにほっこり「若林さんの愛のあるボケと春日さんの全力投球なトークが気持ちよくて2時間が一瞬に感じる」(28歳・建築)、「フリートークが面白すぎて、電車で聴けない」(27歳・事務)、「アンガールズが、少しだけ出演した回は爆笑」(25歳・IT)(右から)春日俊彰、若林正恭。10年以上続いており、雑誌などが出す、好きなラジオランキングでたびたび首位を獲得するほど人気の番組。●放送時間/土曜深夜25:00〜27:00『三原勇希×田中宗一郎 POP LIFE:The Podcast』音楽、映画、ドラマ、小説、漫画etc. 世界のポップカルチャー情報に同期「世界のポップカルチャーの最新情報をキャッチアップできる。専門家たちの、膨大な知識量には毎回目まいがします」(24歳・メーカー)、「三原勇希ちゃんの友達ふたりがゲストの回と、米津玄師さんの作品に迫る回は必聴」(26歳・商社)三原勇希と音楽評論家・田中宗一郎がホストとなり、毎回ゲストを迎え、カルチャーについて雑談形式で語る。●Spotifyにて毎週金曜0:00に最新話配信彗星のごとく現れた新時代のアーティスト MUSIC部門YOASOBISNSでバズった『夜に駆ける』で一躍トップアーティストの仲間入り「耳に残るキャッチーなメロディとikuraさんの可愛い声のバランスが、中毒性がある! 小説を元にしているので、本を読みたくなる音楽」(27歳・事務)、「元になった小説を読んでからMVを観ると、考察が楽しい♪」(29歳・医療)ikura(Vo.)とAyase(Composer)のデュオ。2019年末に発売したデビュー曲『夜に駆ける』が、SNSで話題になり大ブレイク。2021年1月6日に1st EP『THE BOOK』をリリースビリー・アイリッシュビリーの音楽がまとう「孤独」がリスナーの心にそっと寄り添う「孤独な気持ちに寄り添う歌詞と、ダークなメロディで聴くと落ち着く。あと、グラミー賞受賞時に、兄のフィネアスと語ったスピーチに感動しました」(28歳・出版)、「コロナ禍にリリースした『my future』は必聴」(27歳・IT)第62回グラミー賞にて、史上最年少で主要4部門を含む5冠を達成。彼女の音楽プロデューサーである、兄のフィネアスも受賞。最新曲『Therefore I Am』が話題沸騰中BiSH逆境や試練の日々を生き抜く力をBiSHの楽曲でチャージする「各メンバーの個性が強すぎ。掘るほどに好きになる」(26歳・金融)、「BiSHの曲は、雑草のように力強く生きるエネルギーをくれる。メインヴォーカル、アイナ・ジ・エンドさんの表情豊かなハスキーヴォイスは国宝級!」(28歳・サービス)楽器を持たないパンクバンド。2020年は、初のベストアルバム『FOR LiVE -BiSH BEST-』や、“コロナ禍にBiSHにできることを”と3.5thアルバム『LETTERS』などを発売した ♡最新号の試し読み・電子版の購入はこちら♡ 取材・原文/海渡理恵 構成・企画/渡部遥奈(MORE)1月3日
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最近発売された本の中から、おすすめを厳選して紹介!最近発売された話題の本から、3冊のおすすめをご紹介します。『肉体のジェンダーを笑うな』山崎ナオコーラ授乳できるのは女性だけ、平均的に男性のほうが腕力は強い。ジェンダーについて考える時、どうしても肉体的な面で性別は超えられないと思う瞬間がある。本作は、そんな“性差”が減った未来を描いた、ジェンダー小説だ。もしも「父乳」が出たら? 妻が怪力になったら? 性別からの解放とそこで生まれる優しさに、希望をもらえるはず。(集英社 ¥1600)『少女マンガのブサイク女子考』トミヤマユキコ美人は得でブサイクは損。だからいつだってヒロインはかわいい女子ばかり……なんてことはなく、少女マンガには、これまで多様なヒロインが描かれてきた。ルッキズム、自己認識、自己肯定感……。「どうせ自分はかわいくない」と悲観的な気持ちになったことがある人こそ、著者が提示する“ブサイクなヒロイン”たちの言葉に耳を傾けてみてほしい。(左右社 ¥1700)『完璧になれない。だからいい』ヘミン・スニム 〈訳〉おおせこのりこ自分を好きになれなかったり、家族や恋人と喧嘩したり、挫折したり、どうしても何かを諦めなければならなくなったり……。無性に誰かに話を聞いてもらいたくなることはないだろうか?そんな時に、本書のページをめくると、そこにつづられた韓国人僧侶、ヘミン・スニムの言葉が疲れた心にスーッとしみてくる。心地よい説法に癒されて。(アノニマ・スタジオ ¥1700)▶▶【おすすめ☆本】をさらにチェック ♡最新号の試し読み・電子版の購入はこちら♡ 原文/千吉良美樹 ※掲載商品の発売時期については変更等の可能性があります。メーカーHP等で最新情報をご確認ください。12月30日
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知っているようで知らない親の人生。知りたいと思っていても、昔のことを語りたがらない親もいる。辻堂ゆめ『十の輪をくぐる』は、現代と’60年代、2つの時代を舞台にした、互いを知らない母と息子と孫娘の物語だ。斎藤美奈子さいとう みなこ●文芸評論家。編集者を経て’94年『妊娠小説』でデビュー。その後、新聞や雑誌での文芸評論や書評などを執筆。『文章読本さん江』『趣味は読書。』『名作うしろ読み』『文庫解説ワンダーランド』『中古典のすすめ』ほか著書多数。近著は『忖度しません』(筑摩書房)。『十の輪をくぐる』辻堂ゆめ小学館 ¥1,7002019年10月、母の介護を妻に任せっぱなしの泰介は母に年中いらだっていたが、その母が妙なことをいいだした。思えば自分は母のことを何も知らない。幼いころに死んだ父のことも知らない。が、何を聞いても母は「昔のことは忘れた」というばかり。彼女は実は息子にいえない重大な秘密を隠していた。現代と’60年代、2つの時代を舞台にした、互いを知らない母と息子と孫娘の物語。親の人生のこと、どこまで知っていますか?親の人生は知っているようで知らない。もっと話を聞いておけばよかったなと思ったときには時すでに遅し。ただ、昔のことを頑として語らない親もいる。辻堂ゆめ『十の輪をくぐる』はそんな親子の物語だ。佐藤泰介は58歳。大学卒業後、スミダスポーツなる会社で働き、もうじき定年を迎える。少年時代は有望なバレーボールの選手だったが、結局は平凡な人生を歩んでしまった。娘の萌子も高校バレーの選手、それも実業団からスカウトがくるほどの名アタッカーである。だが過去に悔いのある彼は娘の才能を素直に喜べない。母の佐藤万津子は80歳。最近、認知症の症状が出て、ときどき意味不明なことを口走る。先日も母は妙なことをいいだした。〈私は……東洋の魔女〉東洋の魔女って1964年の東京オリンピックで優勝した、あのバレーボールチームのこと?母は五輪に近いところにいたんじゃないかと妻の由佳子はいう。〈だって……お義母さんって、確か結婚前に紡績工場で働いてたんじゃなかった?〉〈もしかして、日紡貝塚(にちぼうかいづか)だったんじゃない?〉母がバレーに熱中していたのは事実である。泰介自身、母の特訓と援助でバレーを続け、妻とも大学のバレー部で知りあったのだ。が、母の若いころの話は知らない。かくして物語は2019年から1958年に一気に飛ぶ。当時、万津子は18歳。愛知県一宮市の紡績工場で働いていた。中学を出ると同時に生まれ故郷の熊本県荒尾市を出て、集団就職でここに来たのだ。彼女の唯一の楽しみは女子バレー部での活動だった。えっ、じゃあもしかして……。いいえ、残念でした。結論からいうと、万津子がいた工場は強豪の日紡貝塚ではなく、彼女は選手にもならなかった。しかし物語はこのあと、思いがけない方向に転がって、スポ根小説より深くて辛い人生の深淵に向かっていく。なにより注目したいのは昭和30年代の時代背景。’64年の東京五輪が戦後復興を象徴する高度成長期の「正の側面」なら、万津子は同じ時代の「負の側面」をひとりで背負ったような女性なのだ。郷里に戻って彼女は炭鉱マンと見合い結婚するのだが、三井三池闘争あり、炭塵(たんじん)爆発事故あり、万津子もその波をもろにかぶる。平成生まれの作者は歴史小説を書くようなつもりで、この時代の描写に臨んだのかもしれない。要素を盛り込みすぎたかなというウラミは残るものの、万津子が過去を決して語らなかった理由や泰介の切れやすさの原因が徐々に明かされていく過程はサスペンスフルで、ミステリーのよう。〈私は……東洋の魔女〉という謎の言葉の秘めたる意味に、読者は最後、深く納得するだろう。 あわせて読みたい!『いなくなった私へ』辻堂ゆめ宝島社 ¥720上条梨乃は人気女性シンガー。ある朝、目を覚ますと渋谷の路上で寝ていた。巨大電光掲示板には「上条梨乃さん、昨夜自殺」のテロップ。じゃあ私は誰? よくできた輪廻転生もの。作者は’92年生まれ。「このミステリーがすごい!」大賞で優秀賞を受賞した、’15年のデビュー作。『私の青春 東洋の魔女と呼ばれて』谷田絹子 三帆舎 ¥1,300’20年12月4日に他界された、元五輪選手の青春記。作者は’39年生まれ。中学2年からバレーボールを始め、名門の四天王寺高校卒業後、ニチボー(日紡)貝塚に入部。’62年に世界選手権で優勝したあと、バレーはやめるつもりだったのに…。東洋の魔女の舞台裏が率直に語られる。>>斎藤美奈子さんのおすすめ本原文/斎藤美奈子 ※エクラ2021年2月号掲載12月30日
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一度ハマったら病みつきになる中毒性の高さも魅力の韓国映画。韓国映画というとラブコメのイメージが強いかもしれませんが、痛快アクションコメディや人間ドラマも完成度の高い作品がたくさんあります! ドラマは長すぎるという人にも映画はおすすめ! グイグイ引き込まれてしまう話題の韓国映画を、Marisol ONLINEライブラリーから6本ご紹介します。【目次】①世界的なヒットを記録したサバイバルパニックアクションの続編「新感染半島 ファイナル・ステージ」②韓国ノワールの新たなる衝撃作「鬼手」③格闘家とベテラン神父が悪に挑む!「ディヴァイン・フューリー 使徒」④痛快アクションコメディー「熱血司祭」⑤ミリオンセラー小説、待望の映画化「82年生まれ、キム・ジヨン」⑥カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した「パラサイト 半地下の家族」ドラマを紹介してくれたのはこの人 ①世界的なヒットを記録したサバイバルパニックアクションの続編「新感染半島 ファイナル・ステージ」2016年、度肝を抜かれ、ゾンビ映画の未来を感じたヨン・サンホ監督の『新感染 ファイナル・エクスプレス』。その4年後の世界を描いた『新感染半島 ファイナル・ステージ』が2021年1月1日に公開されます! パワーアップしてさらに痛快、そして前作同様深く考えさせられるウェルメイドな作品で、韓国やアジア、欧米では7月に公開され大ヒット。前作同様、カンヌ国際映画祭公式作品に選出され、映画祭の総代表も「『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノに続く韓国を代表する監督による素晴らしい映画」と絶賛しています。今作の主演は、韓国では誰もが認めるイケメンの代名詞で、神懸かった十頭身の演技派カン・ドンウォンさん。魅力満載なので、さらにファンが増えそうです!▼カン・ドンウォンさんのインタビュー●『新感染半島 ファイナル・ステージ』に出演を決めた、いちばんの決め手になったポイントを教えてください。ー事前に監督とお話しすることが出来て、シナリオ・ヴィジョンが良いなと感じたことだと思います。●前作『新感染 ファイナル・エクスプレス』の感想を教えてください。ーとても楽しかったです、わくわくしました。4年前に劇場で拝見しました!●『ソウル・ステーション』、『新感染 ファイナル・エクスプレス』に次ぐ作品ということでどのような思いで挑まれましたか?プレッシャーはありましたか?ー監督とたくさんの話し合いをして、自信をもって挑むことができました。過去2作とまったく違う映画ですし、ポストアポカリプス背景の映画にぜひ出演したいと思っていたので、良い経験となりました。●ヨン・サンホ監督とは打ち合わせを重ねましたか?どのようにコミュニケーションをとっていったのでしょうか?監督の印象もお願いします。ーこの準備時期はロサンゼルスにいたので、リモート会議でたくさんコミュニケーションをとりました。監督は本当に愉快な方で、もともと抱いていた印象よりもっと愉快で面白い方でした。すごく優しい方だと思います。もともとクールな印象だったので、イメージと違いました!器の大きい監督で安心して撮影できました。●今回演じたジョンソクは、どのようにキャラクターを構築していかれましたか?ーとにかくシナリオに忠実に演じました。シナリオの初稿をもらった時にはジョンソクのキャラクターは断片的な部分もあったので、その点をどんどん肉付けして立体的な人物にしていこうと考えました。観客の皆さんが、しっかりとジョンソクのあとを追って映画を観ることができるようにジョンソクの心の変化・心境の変化を見せられるように努力して演じました●本作でのアクションは、これまでの作品と違いはありましたか?ゾンビと戦うのは初めてだと思うのですが、難しさなど教えてください。ー今までのアクションと違うところは、やはりゾンビとのアクションという点ですね。ゾンビとの戦いが難しかったです。ゾンビ役の方が怪我してしまわないように、こちらもすごく注意をしながらアクションをしました。ゾンビ役の方はある程度、動きが決められていて防御ができないので、こちらも気を付けながら演じました。※この記事は2020年12月15日に公開したものです②韓国ノワールの新たなる衝撃作「鬼手」『鬼手』はザ・韓国映画の、復讐劇。でもどこか笑えるところもあり、そして痛快! この作品は、チョン・ウソンさん主演『神の一手』のスピンオフで、製作陣が再集結、”静”の囲碁の頭脳戦と、”動”の激しい格闘を融合させた独特な世界を描いています。孤高の天才棋士配役の妙、キャラクターごとに異なる色味や質感にまでこだわったセットや映像の美しさでグイグイ引き込まれます。クォン・サンウさんはもちろん、円熟した役者たちの息をのむ怪演、ジェットコースターのようなストーリー展開で、韓国ノワール界の衝撃作と話題に。脇を固めるのはドラマでもお馴染みの「ゴハン行こうよ 2」「まぶしくて 私たちの輝く時間」のキム・ヒウォンさん、「熱血司祭」のキム・ソンギュンさん、「ウォッチャー」のホ・ソンテさん、そして人気急上昇中のウ・ドファンさん。もうフルコースをいただいた満足感です。リ・ゴン監督は本作が長編デビュー作と知り驚愕!『ディヴァイン・フューリー 使徒』といえば、2018年の10月のこのコラムのために、パク・ソジュンさんにお会いしたとき、アクションの多い、そして格闘家を演じる映画の準備のため楽しみながら体を鍛えていると話してくれたのを思い出します。本作は、大激戦だった今年の百想芸術大賞で最優秀男優賞を勝ち取った「椿の花咲く頃」のカン・ハヌルさんとの大ヒット作『ミッドナイト・ランナー』(リメイクドラマ「未満警察 ミッドナイトランナー」が日本テレビで放映中)と同じ、気心の知れたキム・ジュファン監督との再タッグ。名優アン・ソンギさん、ウ・ドファンさん、そして『パラサイト 半地下の家族』(ソジュンさんもカメオで出ていましたね!)の親友チェ・ウシクさんとの共演も話題に。映画は、めくるめくアクションシーン満載のエクソシストもので、夏にはやっぱり恐怖映画、という方にも、セロイ以上に(!?)格好良すぎるソジュンさんを拝みに詣でるも良しです。映画は世界の映画祭で50冠、キム・ボラ監督の静かで繊細な作品『はちどり』も公開中。若き女性監督は新人監督賞も受賞しています。また、チョン・ユミさんの『82年生まれ、キム・ジヨン』、チョン・ドヨンさんの『君の誕生日』などが秋に公開予定で楽しみです!どちらも監督や女優が賞を受賞した話題作。昨年韓国で観たのですが深く心に響きました。※この記事は2020年7月17日に公開したものです③格闘家とベテラン神父が悪に挑む!「ディヴァイン・フューリー 使徒」『ディヴァイン・フューリー 使徒』といえば、2018年の10月のこのコラムのために、パク・ソジュンさんにお会いしたとき、アクションの多い、そして格闘家を演じる映画の準備のため楽しみながら体を鍛えていると話してくれたのを思い出します。本作は、大激戦だった今年の百想芸術大賞で最優秀男優賞を勝ち取った「椿の花咲く頃」のカン・ハヌルさんとの大ヒット作『ミッドナイト・ランナー』(リメイクドラマ「未満警察 ミッドナイトランナー」が日本テレビで放映中)と同じ、気心の知れたキム・ジュファン監督との再タッグ。名優アン・ソンギさん、ウ・ドファンさん、そして『パラサイト 半地下の家族』(ソジュンさんもカメオで出ていましたね!)の親友チェ・ウシクさんとの共演も話題に。映画は、めくるめくアクションシーン満載のエクソシストもので、夏にはやっぱり恐怖映画、という方にも、セロイ以上に(!?)格好良すぎるソジュンさんを拝みに詣でるも良しです。※この記事は2020年7月17日に公開したものです④痛快アクションコメディー「熱血司祭」DVDで一気見したい作品の「熱血司祭」は、俳優陣の怪演にグイグイ引き込まれ、ゲラゲラ笑えて、そして見応えのあるアクションシーンも痛快!主演のキム・ナムギルさんが、漫画の表情を参考にしたというだけあり、変幻自在の演技で昨年のSBS演技大賞では大賞を受賞。どこか憎めない敏腕検事を演じた、ミスコリアでソウル大学出身の才女イ・ハニさんも振り切った演技で最優秀賞演技賞、キム・ソンギョンさんが優秀演技賞、他脇を固める役者さんたちも助演演技賞、新人演技賞と、8冠、キャスト10名が受賞するという快挙を成し遂げて話題となりました。舞台出身の役者たちの活躍も見どころです!チームの結束の力が作品全体に行き渡った、まるで映画のような完成度の高いドラマなのでお見逃しなく!※この記事は2020年10月15日に公開したものです⑤ミリオンセラー小説、待望の映画化「82年生まれ、キム・ジヨン」韓国で130万部超え、日本でも話題となったベストセラー小説を映画化した『82年生まれ、キム・ジヨン』。韓国では公開から18日間で観客が300万人を超えた大ヒット作です。"キム・ジヨン"は82年に最も多く名付けられた女子の名前だそうで、昨年ソウルの取材先で会った女性も同姓同名。「あ!」と気づくと、「そうなんです」と微笑んでいました。原作も興味深く、夢のようなキャスティングにも惹かれ、昨年10月に旅先の釜山で観たのですが、期待通りの深く考えさせられるじんわり沁みる作品でした。ぜひ映画館に足を運んで観ていただきたい!3年ぶりのスクリーン復帰となったコン・ユさんは壊れていく妻を見守る複雑な心境の夫を余韻を残る演技で魅せ、チョン・ユミさんは大鐘賞映画祭で主演女優賞を、また、ドラマファンならお馴染みのキム・ミギョンさん(「サイコだけど大丈夫」のジュリの母役など)がここでもまた情感たっぷりにジヨンの理解者である母を演じ、百想芸術大賞でも助演女優賞にノミネートされました。並み居る強敵を抑えてキム・ドヨン監督が繊細な演出で、百想芸術大賞新人監督賞を受賞しています。※この記事は2020年10月15日に公開したものです⑥カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した「パラサイト 半地下の家族」『パラサイト 半地下の家族』では、チェ・ウシクさんがメインキャラクターを演じているのですが、チェ・ウシクさんは気の合う親友だと昨年インタビューで話してくれた、パク・ソジュンさんもカメオで登場します。とにかく強力プッシュ作品ですが、このほか最近機上で観た『エクストリーム・ジョブ』(来年1月3日公開予定)と『ガールコップス(原題)』も良かったです。かなり笑えて、私好み!!『エクストリーム・ジョブ』の美しいイ・ハニさんはハリウッドにも進出予定だとか。ミスユニバース第4位、ソウル大学出身、特技は伽耶琴、パンソリという多才な女優さんです。ドラマ「熱血司祭(原題)」でも熱演が光っていました。そしてこの作品のイ・ビョンホン監督が脚本・監督を手がけたドラマ「メロが体質(原題)」も面白いと評判なので早く観たい!映画にもこのドラマにも若手名脇役コンミョンさんがキャスティングされています。『ガールコップス』は『怪しい彼女』が好きならきっと気に入ると思う作品。個性派のベテラン女優ラ・ミランさんと、モデル出身のチャーミングなイ・ソンギョンさん演じる警察官が事件と立ち向かう姿がコミカルで爽快!同じくわたしは機上で観た作品なのですが、現在日本公開中の『毒戦 BELIEVER』も良くできています。 ※この記事は2019年10月16日に公開したものです▼あわせて読みたい12月29日
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世界レベルの一大ブーム大賞 KカルチャーKカルチャーとは?韓国が全世界に向けて生み出す、音楽、ドラマ、映画、文学などのカルチャー作品を総称したものMORE Kカルチャー四銃士編集S第1次韓流ブーム時からKエンタメを追っかけ。2PMをはじめJYPのアーティスト推し編集K2014年にEXOに出会って、Kエンタメ沼にハマる。最近の推しグループは、SuperM編集YSHINee、f(x)、EXOから、Kカルチャーの虜に。座談会メンバーイチのアイドル通編集TMOREのKエンタメ関連ページの編集担当。推しは、TWICE、BTS、NCT、SEVENTEENなど兼ヲタこれさえ知っておけば! Kカルチャー NOW & NEXT HIT猛スピードで新しいアーティストや作品が生み出されている韓国。あまたある作品群の中から、イット&アップカミングな作品をラインナップ!MUSIC部門【NOW】変幻自在な最先端グループ NCT(エヌシーティー)「楽曲、MV、衣装など、クリエイションすべてがおしゃれ&先進性を感じます。あと、23人もいるので推し探しが楽しい! 今は2020年秋に新加入したばかりの、高いダンススキルを持つ日本人メンバー・ショウタロウから目が離せません」(編集T)2016年4月デビュー。NCTは、ネオ・カルチャー・テクノロジーの略。“開放”と“拡張”をテーマにした新しい概念を掲げており、メンバーの入れ替えと数に制限がないグループ【NOW】誰にもなびかない強さを体現 MAMAMOO(ママム)「圧巻の歌唱力を持つ4人。楽曲を通して、『私は、他人の価値観に振り回されないわ!』と高らかに宣言する姿は、見ていてすがすがしく、勇気をもらえます。代表曲『HIP』と、メンバーのファサの大ヒットソロ曲『Maria』を聴いてみて」(編集K)2014年にデビューした4人組。グループ名は、「赤ん坊たちがいちばん初めに覚え話す“ママ”のように、全世界のすべての人たちに親しまれる音楽を披露したい」という意味がこめられている【NEXT】「私は私」と歌い上げる ITZY(イッジ)「強さと愛らしさが、絶妙なバランスで共存したITZYの楽曲は、キャッチーかつ自己肯定してくれる歌詞のものが多く、聴くと力がわく。『DALLA DALLA』と『WANNABE』は必聴。スタイリングもポップ&クールで、見るとワクワクします」(編集S)2019年2月に、シングル『IT'z Different』でデビュー。グループ名には、「あなたの望むものは、すべて私たちの中にある」という意味が。2020年に発売した『Not Shy』が話題に【NEXT】日本出身メンバーも在籍 TREASURE(トレジャー)「BLACKPINKの所属事務所、YG ENTERTAINMENTから誕生。12人で繰り広げる迫力のパフォーマンスと、日本出身メンバー4人のキャラクターが素晴らしい◎。楽曲も耳に残るものが多く、まずは『I LOVE YOU』や『MMM』を聴いてみてほしい」(編集Y)デビューサバイバル番組『YG宝石箱』から誕生した、12人組ボーイズグループ。2020年8月にデビューして、11月には3rdシングル『THE FIRST STEP : CHAPTER THREE』を発売したDRAMA部門【NOW】女優ソ・イェジの衣装も話題 『サイコだけど大丈夫』 「兵役を終えたキム・スヒョンのドラマ復帰作。ファンタジードラマかと思って観てみたら、中盤に入ると色濃くなるドラマが描くメッセージに考えさせられます。ソ・イェジのファッション、ヘア&メイクが、うっとりするほど素敵!」(編集T)愛を知らない童話作家と精神病棟で働く介護士が出会い、お互いの心の傷を癒しあうロマンティックラブコメディ。●Netflixオリジナルシリーズ『サイコだけど大丈夫』独占配信中【NOW】本国で高視聴率を記録! 『賢い医師生活』「韓国ドラマ特有の『こんなことある⁉』という派手な展開はなく、医師の日常をていねいに描いた作品です。俳優陣もチョ・ジョンソクやユ・ヨンソクなど実力派が勢ぞろい。本国では大ヒットし、シーズン2の制作が決定しているそう」(編集S)医学部の同級生5人は、仲間のひとりの病院で一緒に働くことに。同志と共に、仕事に励む日々を描いたヒューマンドラマ。●Netflixオリジナルシリーズ『賢い医師生活』独占配信中【NEXT】モア世代俳優陣が贈る青春劇 『青春の記録』「パク・ボゴムとパク・ソダムという若手俳優のトップふたりが共演した青春ドラマは、キュン&せつないシーンのオンパレード。登場人物それぞれが自分の夢や愛に向かって突き進む姿は、眩しすぎます。あと、挿入歌にも注目!」(編集Y)俳優としての成功を夢見るふたりの青年と、メイクアップアーティストの卵。自力で、夢をつかもうとする若者の青春の日々を描く。●Netflixオリジナルシリーズ『青春の記録』独占配信中【NEXT】同い年のダブル主演俳優に注目! 『スタートアップ:夢の扉』「ペ・スジとナム・ジュヒョクという最強の同い年俳優が主演を務めているというだけでも観る価値が! 脚本も素晴らしく、1話からホロリ。仲間と共に起業し、日々懸命に生きる若者たちの姿に、モア世代なら誰しもが刺激を受けるはず」(編集Y)競争の激しいハイテク業界で、夢をかなえるべくビジネスを立ち上げた若き起業家たちの奮闘とロマンスの物語。●Netflixオリジナルシリーズ『スタートアップ: 夢の扉』独占配信中MOVIE部門【NOW】記憶に潜む青春の痛みに刺さる 『はちどり』「次世代の韓国映画を担う存在と言われている、キム・ボラ監督初の長編作。誰しもが青春時代に感じる生きづらさを、ていねいに描いており、ずっと涙が止まりませんでした。主人公の少女ウニを演じるパク・ジフや彼女が通う漢文教室の教師役のキム・セビョクさんの演技が、素晴らしいのでぜひ」(編集T)© 2018 EPIPHANY FILMS. ALL RIGHTS RESERVED.1994年、ソウル。14歳の少女ウニは、家や学校の人間関係に孤独感を抱えていた。しかし、漢文教室で女性教師ヨンジと出会い、しだいに心を開いていく。●全国順次公開中【NEXT】大ヒット映画の続編が公開! 『新感染半島 ファイナル・ステージ』「前作『新感染 ファイナル・エクスプレス』の4年後を描いた、『新感染半島 ファイナル・ステージ』。パンデミックに襲われた半島を舞台にしており、私たちが生きる現実世界を彷彿とさせます。前回主演のコン・ユのリアル親戚カン・ドンウォンが主演! ド派手な迫力満点の映像を満喫して」(編集K)©2020 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILMS.All Rights Reserved.ジョンソクはパンデミックに襲われた半島に、ある任務を遂行するため4年ぶりに戻る。無事に任務を終え、半島を脱出できるのか!? ●1/1〜TOHO シネマズ日比谷ほか全国公開BOOK部門【NOW】本屋大賞 翻訳小説部門を獲得! 『アーモンド』「今、日本語に翻訳され、話題を集めている韓国文学は、女性作家の作品が多い! 2020年の本屋大賞 翻訳小説部門を受賞した今作もそう。失感情症の主人公が、ある出会いをきっかけに、少しずつ変化していくラストは感泣です。スッキリと読みやすい文体で、小説が苦手な人でも手に取りやすい」(編集S)ソン・ウォンピョン 〈訳〉矢島暁子扁桃体(アーモンド)が小さく、感情がわからないユンジェ。ある出会いが彼の人生に変化をもたらす。(祥伝社 ¥1600)【NEXT】K-POPアイドルも読む大ヒット作 『死にたいけどトッポッキは食べたい』「ここ数年、自分らしく生きるための支えになるエッセイ本が、数多く出版されている韓国。今作は、本国でベストセラーになった作品で、BTSのRMが読んでいたことでも話題になった一冊です。家族や会社、友人など、人間関係に悩んでいる人におすすめ。読めばきっと心が軽くなると思います」(編集K)ペク・セヒ 〈訳〉山口ミル気分変調症の著者と精神科医との対話を記録した、ノンフィクション。他者との関わり方を見直す契機に。(光文社 ¥1400) ♡最新号の試し読み・電子版の購入はこちら♡ 取材・原文/海渡理恵 イラスト/yui 構成・企画/渡部遥奈(MORE)12月29日
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書評家・ライターの江南亜美子が、アラサー女子におすすめの最新本をピックアップ! 今回は、思考や記憶が、誰にも侵犯されないことの崇高さを、あらためて感じさせてくれる小説、桐野夏生の『日没』をご紹介します。 ナビゲーター 江南亜美子 文学の力を信じている書評家・ライター。新人発掘にも積極的。共著に『世界の8大文学賞』。 近未来ではなくて、過去でもなくて、現在。今このときをディストピアの舞台に設定しているのが、本書『日没』の特徴だ。私たちの暮らしのすぐ隣で、この事態が進行していてもおかしくないというリアリティが読み心地をさらに怖くさせる。主人公は小説家のマッツ夢井。飼い猫が失踪したある日、一枚の召喚状が届く。呼び出された先は断崖に建つ「療養所」で、ネットもつながらない。そこで男らは社会に適応した「よい小説」を書けと、指図する。貧相な食事、決められた入浴時間、禁止される会話。氷入りの無臭の飲料水すら贅沢となってしまった突然の理不尽な生活に、彼女はまっとうに抗議する。最初は勢いのあった反発も、恐怖心で精神を支配するやり方によって、だんだんと従順にならざるをえない。そして望まれたとおりの、人情話めいた心温まる小説などを書き始めるのだが……。「本物の希望は、私が正気を保つことだ」この勾留状態から彼女は逃げ出せるのか?思想統制の恐ろしさに、食事や行動の制限といった想像しやすい側面から迫っていったこの小説は、私たちに「自由」の大切さをあらためて考えさせてくれる。 『日没』 桐野夏生著 岩波書店 1800円 心温まる小説を書け。強いられた作家の抵抗作家に届いた政府からの召喚状。有害な小説だと読者に告発された作家は、実質的な監禁状態に置かれる。減点式でのびる勾留期間、奪われる言葉と自由……。桐野夏生らしいリアルな恐怖小説。 これも気になる! 『海と山のオムレツ』 カルミネ・アバーテ著 関口英子訳新潮社 1900円 「その土地特有の味」豊かな味覚を養えば南イタリア出身作家が、郷土の絶品料理とその風景を描き出す自伝的短編小説集。「おいしいものを食べていた郷里の記憶がよみがえる」。親しい人の懐かしさが胸に迫る。読むとおなかが鳴ること必至の本。 イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2021年1月号掲載 【BAILA 1月号はこちらから!】12月28日
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世界レベルの一大ブーム大賞何がはやった? なんではやった? 2020 韓国エンタメ 総ざらい座談会!2020年は、Kエンタメ界にかつてないほどエポックメイキングな出来事が多発した。2021年、さらに勢いを増して世界を席巻するだろう韓国カルチャーの今を、MOREスタッフが語りまくる!Kカルチャーとは?韓国が全世界に向けて生み出す、音楽、ドラマ、映画、文学などのカルチャー作品を総称したものMORE Kカルチャー四銃士編集S第1次韓流ブーム時からKエンタメを追っかけ。2PMをはじめJYPのアーティスト推し編集K2014年にEXOに出会って、Kエンタメ沼にハマる。最近の推しグループは、SuperM編集YSHINee、f(x)、EXOから、Kカルチャーの虜に。座談会メンバーイチのアイドル通編集TMOREのKエンタメ関連ページの編集担当。推しは、TWICE、BTS、NCT、SEVENTEENなど兼ヲタ韓国エンタメの最盛期到来! コロナ禍も世界に怒とうの発信編集T(以下T) 日本では数年前に巻き起こった「第3次韓流ブーム」以降、韓国発の音楽、映画、ドラマ、文学が注目度を高めていたけど、2020年は、世界でその存在感を爆発的に高めたよね。編集K(以下K) 2019年までは、まだまだサブカルチャー的な扱いだったのが、一気にメインストリームに躍り出たという印象! 編集S(以下S) それは、年明け早々に届いた、ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』のアカデミー賞4冠のニュースにはじまり、社会現象になった、Netflixのオリジナルドラマ『愛の不時着』や『梨泰院クラス』。さらには、NiziUが誕生した、グローバルオーディション番組『Nizi Project』、そして、偉業を挙げ始めたらきりがない、BTSやTWICE、BLACKPINKといったK‐POPアーティストの世界的な活躍の功績が大きいよね。T あらゆる方位から、上質なエンタメ作品の大量攻めにあった一年(笑)。外出自粛期間中に、どれだけ救われたことか!編集Y(以下Y) ここまでムーブメントになったのは、グローバルを意識して制作した作品自体のクオリティの高さはもちろん、“配信場所”が鍵ですよね! 映像作品なら、Netflixなどの世界的な配信サービスで。音楽ならSpotifyやApple Music、YouTube、VLIVEなど、誰でもアクセスしやすいプラットフォームでほぼ(本国と)時差なく配信されたことがより影響力を高めた気が。おうち時間が増え、個人のネット環境も整いつつある、今の時代にマッチしたんだと思います。K そう。以前は、韓国ドラマ=有料の専門チャンネルで観るものだったのに、誰でも気軽に観られるようになったことは間違いなく、盛り上がりを後押ししたね。ヒョンビン●Netflixオリジナルシリーズ『愛の不時着』独占配信中Netflixのオリジナル作品が大ヒットを連発!S ドラマや映画界は、Netflixのオリジナル作品がヒットを連発してたね。配信作品は、どれも脚本といい俳優といい素晴らしかった!T Netflixの勢いと同等に、モア世代俳優の活躍ぶりもすごかったですよね。『パラサイト』で話題を集めた、パク・ソダムとパク・ボゴム出演の『青春の記録』、スジと出演作が公開ラッシュ中のナム・ジュヒョク主演の『スタートアップ:夢の扉』は必見。ちなみに、ナム・ジュヒョクは、本国で公開中の映画『ジョゼ』(日本映画『ジョゼと虎と魚たち』のリメイク)にも主演していて、日本での公開を期待してる!K 新韓流四天王のひとりで、出演作にハズレがない、パク・ソジュンも大活躍だったよね。『梨泰院クラス』も、『キム秘書はいったい、なぜ?』もどちらもよかった。Y 私は、演技ドル(俳優活動もするアイドル)を追っていたんですが、ASTROのウヌ主演の胸キュン作『私のIDはカンナム美人』、EXOのD.O.主演の映画『スウィング・キッズ』が、ヒットでした♡パク・ソジュン●Netflixオリジナルシリーズ『梨泰院クラス』独占配信中バラエティ豊かなガールズグループS K‐POPは、BTSやBLACKPINKを筆頭に、卓越した楽曲制作やアクティブな活動で、米ビルボードへのランクインが当たり前になったよね。BTSの『Dynamite』のビルボードメインシングルチャート“HOT100”1位&グラミー賞ノミネートの歴史的快挙は、必然だけど衝撃だった。Y 最新アルバム『BE』も素晴らしかったですね。私は個人的に、今月MOREの表紙を飾っているTWICEやMAMAMOO、(G)I-DLE、ITZY、今月の少女といった、女性アーティストに夢中になった一年でした。10年前の「第2次韓流ブーム」と言われた時と違い、最近のガールズグループは可愛さ、セクシーさ、その他さまざまな女性の魅力を肯定するタイプがいる。ロールモデルにしたい人が大勢いて楽しくて。K 私は、オーディション番組を勝ち抜き、2020年デビューした4組を追っかけ中。NiziUや『PRODUCE 101 JAPAN』から誕生したJO1(シーズン2の始動が決定!)。『YG宝石箱』から生まれた、日本出身者が4人も所属する、TREASURE。BTSの事務所が手がけた『I-LAND』より誕生した、ENHYPEN。今後のエンタメ業界を担う次世代の筆頭株たちから目が離せない!T ENHYPENの日本人メンバーNI-KI君は、私も注目してます♡映像化作品が多数! 女性作家の文学がアツいS 日本で韓国文学人気の火つけ役は、チョ・ナムジュの小説『82年生まれ、キム・ジヨン』。旬の女優チョン・ユミ主演で映画化もされたね。T 終始泣けた。チョン・ユミは、若手作家№1のチョン・セランの小説をドラマ化した『保健教師アン・ウニョン』にも主演しているよね。K 韓国エンタメって、音楽、映画、文学とシームレスに各分野がつながっているから、いつの間にか全ジャンルに手を出していることが多々。T ハイコンテクスト時代ですね。2021年は、どんな作品に出合えるのか、今から楽しみです♪今最も勢いのある女優チョン・ユミ。●Netflixオリジナルシリーズ『保健教師アン・ウニョン』独占配信中 ♡最新号の試し読み・電子版の購入はこちら♡ 取材・原文/海渡理恵 イラスト/yui 構成・企画/渡部遥奈(MORE)12月28日
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12星座全体の運勢「呑み込むべき“寒九の水”を問う」 2021年を迎えて最初の新月は1月13日にやぎ座の第三デカン(20から29度)で起こります。やぎ座の現実主義に水星の知性が加わるため、この新月では特に物事の本質を見抜く客観性が冴えわたっていくでしょう。 二十四節気では1月5日より「小寒」に入ります。いわゆる「寒の入り」と言われ、冬至で「一陽」を得ることでかえって陰気が強まり、ますます冷えが厳しくなっていく頃合いとされています。そして、今回新月が起こる1月13日は寒の入りから9日目の「寒九」にあたり、昔からこの日の水(寒九の水)は特別な力が宿るとされ、餅をつくにも、お酒を造るにも、薬を飲むにも、珍重されてきましたが、この特別冷たい水こそが薬にも力にもなるという発想は、まさに今回の新月のテーマとも言えます。 すなわち、人間が経験しうるもっとも純粋な自由というのは、厳しい規律や掟を受け入れ、従うことでこそ実現可能になるということ。さながら寒い時期ほど、一年を通して温度変化の少ない地下水さえもがあたたかく染み入るように感じられるように。あなたの人生に力を与え、解放させてくれるだけの「冷たさ=厳しい現実やその枠組み、ルール等」とは何か、それをいかに取り入れていけるかが今期 は問われていきそうです。牡牛座(おうし座)今期のおうし座のキーワードは、「わたしは攪乱されたい人間なのです(鎌田東二)」。 日本人が本気で意識が変わる時というのは、どうも戦争で負けるとか、バブル経済がはじけるといった政治経済的なものというより、むしろ公害問題や震災・津波などの自然災害によって引き起こされるのではないか。 3.11の後、個人的にそんな考えを持ったことがありますが、同じことを“風景異化”という視点から、より本質的かつダイナミックに迫った対談が、宗教学者の鎌田東二とランドスケープアーティストのハナムラチカヒロによって生まれた『ヒューマンスケールを超えて』という本に収められています。 その中で、鎌田は超能力少年がもう一回先祖返りするように違う意識と身体の在り方に変容していく物語を描いた宮内勝典の小説『ぼくは始祖鳥になりたい』(1998年)を例に挙げ、「ヒューマンスケールは物足りない」「ネイチャーの方がもっとおもしろい」「わたしは恐竜の子孫であると本当に思うのです」と畳みかけるように語っていきます。 そして、それを受けたハナムラもまた、「生態学の中では攪乱(かくらん)という要素がすごく重要です。環境に何かの攪乱が起こることによって、一度リセットされてぐっと違う方向にいく」と風景異化が人間に与える身体的・精神的インパクトについて説明した後、次のように語るのです。 「進化というのをぼくらは平面的に見ている。平面的に見ると、始祖鳥に戻るという話かもしれないですけど、上からみるとらせんのようになっていて、同じところに戻っているように見えるかもしれないけど、じつはずっと深まっていっているという話ではないか」 「人間だけの進化を考えなくても、地球で、あるいは宇宙で何かが進化していけばいいという考え方に立てば、人間中心主義といったところから脱出できる」 これを今期のおうし座に置き換えたとき、いま自分が巻き込まれている変化の激流に対し、ある種の「攪乱」と捉えていくこともできるのではないでしょうか。 そして、それが“進化論的心身変容”をもたらすものであるのか。もし二人のようなパースペクティブで捉えなおしてみることができれば、少なからず気付きが得られるはずです。 参考:鎌田東二・ハナムラチカヒロ『ヒューマンスケールを超えて わたし・聖地・地球』(ぷねうま舎) 12星座占い<12/27~1/9>まとめはこちら<プロフィール>應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。文/SUGAR イラスト/チヤキ12月27日
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[目次] 【SUGARさんの12星座占い】<12/27~1/9>の12星座全体の運勢は? 【SUGARさんの12星座占い】12星座別の運勢 《牡羊座(おひつじ座)》 《牡牛座(おうし座)》 《双子座(ふたご座)》 《蟹座(かに座)》 《獅子座(しし座)》 《乙女座(おとめ座)》 《天秤座(てんびん座)》 《蠍座(さそり座)》 《射手座(いて座)》 《山羊座(やぎ座)》 《水瓶座(みずがめ座)》 《魚座(うお座)》 【SUGARさんの12星座占い】<12/27~1/9>の12星座全体の運勢は?「呑み込むべき“寒九の水”を問う」 2021年を迎えて最初の新月は1月13日にやぎ座の第三デカン(20から29度)で起こります。やぎ座の現実主義に水星の知性が加わるため、この新月では特に物事の本質を見抜く客観性が冴えわたっていくでしょう。 二十四節気では1月5日より「小寒」に入ります。いわゆる「寒の入り」と言われ、冬至で「一陽」を得ることでかえって陰気が強まり、ますます冷えが厳しくなっていく頃合いとされています。そして、今回新月が起こる1月13日は寒の入りから9日目の「寒九」にあたり、昔からこの日の水(寒九の水)は特別な力が宿るとされ、餅をつくにも、お酒を造るにも、薬を飲むにも、珍重されてきましたが、この特別冷たい水こそが薬にも力にもなるという発想は、まさに今回の新月のテーマとも言えます。 すなわち、人間が経験しうるもっとも純粋な自由というのは、厳しい規律や掟を受け入れ、従うことでこそ実現可能になるということ。さながら寒い時期ほど、一年を通して温度変化の少ない地下水さえもがあたたかく染み入るように感じられるように。あなたの人生に力を与え、解放させてくれるだけの「冷たさ=厳しい現実やその枠組み、ルール等」とは何か、それをいかに取り入れていけるかが今期 は問われていきそうです。《牡羊座(おひつじ座)》(3/21〜4/19)今期のおひつじ座のキーワードは、「新たな時代に発生する痛み」。 リモートワークやオンラインでのコミュニケーションが当たり前になっていった2020年に続き、2021年もまたテクノロジーが経済と手を携えながら世界を新たな構造に組み換えようとする流れはますます速く、強くなっていくでしょう。 こうした状況において、私たち人間社会は真っ先に生活の中の美的な価値を犠牲にしてしまうのだと指摘したのがデザイナーの原研哉です。2003年に出版された『デザインのデザイン』という本の冒頭で、彼は「時代が進もうとするその先へまなざしを向けるのではなく、むしろその悲鳴に耳を澄ますことや、その変化の中でかき消されそうになる繊細な価値に目を向けることの方が重要なのではないか」と一つの指針を打ち出しています。 そしてそれから、創造の資源として蓄積されてきた歴史の一つとして、機械生産で活気づいていた一方で、粗雑な日用品の発生という状況に直面していた150年前のイギリスを例に挙げます。 「デザイン」という思想の源流となったジョン・ラスキンとウィリアム・モリスは、それぞれ講演と著作、芸術・デザイン運動という形で、「生活環境を激変させる産業メカニズムの中に潜む鈍感さや不成熟に対する美的な感受性の反発」を展開したのであり、その痛みの深さこそが引き金となって、デザインという考え方・感じ方、すなわち「最適なものや環境を生み出す喜びやそれを生活の中に用いる喜び」に基づく既存の芸術とは異なるムーブメントが世に現われてきたのだ、と。 翻って、昨今の世の流れになんとか適応する中で、いまあなたの生活では何が犠牲になっていて、どれほどの悲鳴をあげているのでしょうか? 新たな時代の到来には、必ず相応の痛みの発生が伴うもの。今期のおひつじ座は、それがどんな引き金を引いていくことになるのかを確かめる意味でも、まずは現在の生活に潜む「鈍感さや不成熟」にしかと目を止めていきたいところです。 参考:原研哉『デザインのデザイン』(岩波書店) 《牡牛座(おうし座)》(4/20〜5/20)今期のおうし座のキーワードは、「わたしは攪乱されたい人間なのです(鎌田東二)」。 日本人が本気で意識が変わる時というのは、どうも戦争で負けるとか、バブル経済がはじけるといった政治経済的なものというより、むしろ公害問題や震災・津波などの自然災害によって引き起こされるのではないか。 3.11の後、個人的にそんな考えを持ったことがありますが、同じことを“風景異化”という視点から、より本質的かつダイナミックに迫った対談が、宗教学者の鎌田東二とランドスケープアーティストのハナムラチカヒロによって生まれた『ヒューマンスケールを超えて』という本に収められています。 その中で、鎌田は超能力少年がもう一回先祖返りするように違う意識と身体の在り方に変容していく物語を描いた宮内勝典の小説『ぼくは始祖鳥になりたい』(1998年)を例に挙げ、「ヒューマンスケールは物足りない」「ネイチャーの方がもっとおもしろい」「わたしは恐竜の子孫であると本当に思うのです」と畳みかけるように語っていきます。 そして、それを受けたハナムラもまた、「生態学の中では攪乱(かくらん)という要素がすごく重要です。環境に何かの攪乱が起こることによって、一度リセットされてぐっと違う方向にいく」と風景異化が人間に与える身体的・精神的インパクトについて説明した後、次のように語るのです。 「進化というのをぼくらは平面的に見ている。平面的に見ると、始祖鳥に戻るという話かもしれないですけど、上からみるとらせんのようになっていて、同じところに戻っているように見えるかもしれないけど、じつはずっと深まっていっているという話ではないか」 「人間だけの進化を考えなくても、地球で、あるいは宇宙で何かが進化していけばいいという考え方に立てば、人間中心主義といったところから脱出できる」 これを今期のおうし座に置き換えたとき、いま自分が巻き込まれている変化の激流に対し、ある種の「攪乱」と捉えていくこともできるのではないでしょうか。 そして、それが“進化論的心身変容”をもたらすものであるのか。もし二人のようなパースペクティブで捉えなおしてみることができれば、少なからず気付きが得られるはずです。 参考:鎌田東二・ハナムラチカヒロ『ヒューマンスケールを超えて わたし・聖地・地球』(ぷねうま舎) 《双子座(ふたご座)》(5/21〜6/21)今期のふたご座のキーワードは、「謎の感覚」。 こうした時勢において仕事で占いに関わっていると、どうしても「コロナはいつ収束しますか」と聞かれる機会がちらほらある。冗談めかして聞いてくる人もいるが、大抵は真剣なトーンで聞かれるので、こちらも困ってしまう。占いといってもそれはしょせん人の手でするものであり、神のみのぞ知るとしか言いようがない。そして“神”とは元来、沈黙する者であり、隠れたる神なのだ。 20世紀を代表する宗教学者のルドルフ・オットーは、こうした神の幽暗で不可解なあり方に深く分け入り、神学が提示する神の合理的側面(「信じる者は救われる」等)に対して、非合理的側面を強調し、それは人間の神に対する戦慄的畏怖(ヌミノーゼ)において立ち現れるものと分析していった。 例えば、処刑前夜のイエスが最後の晩餐後に祈りを捧げ、またユダに裏切られ捕えられた場所として知られるゲッセマネの夜のイエスの態度について、オットーは「この秘義と戦慄とのヌミノーゼの光に照らしかつそれを背景として、私たちは最後にまた、ゲッセマネの夜のイエスの苦闘を見、そしてそこでは何が問題であったかを理解し追感せねばならない」と前置きした上で、次のように問いかけてみせる。 「この魂の根底まで揺り動かす震駭と逡巡、この死ぬばかりの懊悩、この血の滴のように地上に流れる汗、これらは果して何の故であるか。普通の死の怖れだろうか。すでに一週間以来死を目前に見ていた者、明白な自覚をもって死の晩餐を弟子達と共にした者に、そんなことがあり得るだろうか。否、ここには死の怖れ以上のものがある。ここには、戦慄すべき秘義の前に、畏怖に満ちた謎の前に感じた被造者の畏がある。モーゼとその召使いとを夜「襲撃した」という伝説のヤハウェ、夜明けに至るまで神と格闘したという古伝説のヤコブが、それを解明する類例ならびに預言として、思い出されるではないか。」 ここには、人間が人間に対して感じる不可解と同じレベルの死の恐怖を超えた、それ以上の「謎の感覚」があった。つまり、神の不可解がこの上なく拡大されていたのであり、そうであったからこそ、十字架にかけられたイエスの「エリ、エリ、レマ、サバクタニ(わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか)」という叫びにも似た問いかけはただ虚しく響くのではなく、相応の答えを得たのではないだろうか。 そして今期のふたご座もまた、何かを問うという行為をこうした「謎の感覚」とどこまで連動させることできるかどうかを少なからず問われていくはずだ。 参考:ルドルフ・オットー、山谷省吾訳『聖なるもの』(岩波文庫) 《蟹座(かに座)》(6/22〜7/22)今期のかに座のキーワードは、「戦わない知性」。 病気にかかれば病気と戦いたがったり、コロナが流行ればコロナを悪者にして戦いたがる人は一定数いるものですが、なにかと「戦う」よりも「やりすごし」「生き延びる」ことのほうが抵抗的である場合もあるのではないでしょうか。 精神科医の中井久夫は「ストレスをこなすこと」というエッセイにおいて、やはり人類が共通して抱える問題としてのストレスに対し、同様の戦略を提案しています。 「「ストレス解消法」は、何にせよ、一時しのぎと考えて、「ストレス感」がなくなるまで徹底的に追求しないことです。追求すると、むしろ、むなしい感じが生まれ、これは全然消えません。」 「人事の人はよく「三日、三十日、三カ月、三年」といいます。就職してから退職を申し出るまでの期間です。こういう時期は、生理的にやめたくなるらしいので、休暇を取るとか少し仕事の気を抜いてでもいいからやり過ごして、それから考えてみるのがいいでしょう。」 「仕事にせよ家事にせよハイキングにせよデートにせよ、四十分単位、二時間単位で計画するのがかしこいと思います。四時間もぶっつづけでやったら、「おもしらうてやがて悲しき鵜飼かな」(芭蕉)ということになります。」 こうしたいっけん地味な提案の数々が、いったいどれほどの抵抗力を人に与え、生き延びることを言祝いできたかは、実際に試してみればすぐに分かることでしょう。危機においては、威勢がいいだけではダメなのです。頭をカッカさせて声高に何かを叫ぶだけでは、結局なに一つ事態は好転しません。 今期のかに座もまた、何か誰かと「戦う」ことをやめることで、かえって抵抗力を高めていくという戦略について、自分の身に引き寄せて考えてみるといいでしょう。 参考:中井久夫『精神科医がものを書くとき』(ちくま学芸文庫) 《獅子座(しし座)》(7/23〜8/22)今期のしし座のキーワードは、「世に棲む患者」。 役に立つか立たないかで言えば、成功者の自伝ほど役に立たないものはありませんが(役に立たないから悪い訳ではないが)、実際に歴史上の天才たちが、いかにお手本にしたいとは思わないような日常を送っていたかを簡潔にまとめたのが『天災たちの日課』という本です。副題は「クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々」。 例えば、自分のことをカナダで「もっとも経験を積んだ世捨て人」と呼んでいた天才ピアニスト、グレン・グールドは、インタビューの中で自身のスケジュールについて次のように語っていたのだそうです。 「僕はきわめて夜型の生活を送っている。その理由はおもに、日光があまり好きではないからだ。じっさい、明るい色はどんな色でも気分を落ち込ませる。僕の気分はだいたい、どんな日も、空の晴れぐあいと反比例するんだ。「暗雲の向こうには必ず銀色の光がある」ということわざがあるが、ぼくの個人的なモットーは昔からずっとその反対で「銀色の光の向こうには必ず暗雲がある」だ。だから、用事はできるだけ遅い時間に設定して、夕暮れにコウモリやアライグマといっしょに活動を始めるようにしている。」 他にも彼のおかしなジンクスの数々を読んでいると、人間としてどうよ、と言いたくなる気持ちも出てくる一方で、精神科医・中井久夫の「世に棲む患者」という概念を思い出さずにはいられません。 これは、患者を制限の多く抑圧的な「世の中」の“普通”に適応させるのではなく、むしろ「世の中」それ自体をもっと多層的なものとして捉え、その中での特異性を発明しつつ生き延びる人々を肯定するために使われたもので、まさにグールドのような人のための言葉と言っても過言ではないでしょう。 その意味で、今期のしし座もまた、グールドのように生き延びるために“異常さ”をつぎつぎと発明するくらいの気概が欲しいところです。 参考:メイソン・カリー、金原瑞人・石田文子訳『天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々』(フィルムアート社) 《乙女座(おとめ座)》(8/23〜9/22)今期のおとめ座のキーワードは、「ネガティブ・ケイパビリティ」。 毎日膨大な数の書籍が出版され、日々すさまじい量の情報がスマホやPCから目に飛び込んでくる現代社会では、できるだけ早く情報の流れを「理解」し「分かった」状態に至れるか否かが鍵になってくるかのように思われますが、果たしてそれは正しいのでしょうか。 例えば、今ほど性の規範の見直しが力強く叫ばれることのなかった時代、男性でありながら女性的な精神を宿していた文豪のひとりに、26歳の若さで病没したロマン派詩人ジョン・キーツ(1795~1821)がいます。 彼はみずからの詩作行為と、シェイクスピアへの心酔から、詩人が身につけるべき能力として、価値判断を保留して宙づり状態にし続けることを表す「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉の名付け親としても知られていますが、本人の言葉を借りればそれは次のようなもののようです。 「詩人はあらゆる存在の中で、最も非詩的である。というのも詩人はアイデンティティを持たないからだ。詩人は常にアイデンティティを求めながらも至らず、代わりに何か他の物体を満たす。神の衝動の産物である太陽と月、海、男と女などは詩的であり、変えられない属性を持っている。ところが、詩人は何も持たない。アイデンティティがない。確かに、神のあらゆる創造物の中で最も詩的でない。自己というものがないのだ。」 つまり、アイデンティティを持たない詩人は、それゆえにアイデンティティを必死に模索する。それは短気に事実や理由を手に入れようとはせず、不確かさや、神秘的なこと、疑惑ある状態の中に留まり続ける能力を必要としますが、キーツはそれをネガティブ・ケイパビリティ(負の能力)と呼んだのです。 そこでは訳の分からないことや、取り付く島もない事態を前にした時のすっきりしない、不快な気分にじっと耐えることになる訳ですが、そうした力が必要な事態や状況というのは、すぐになにかを「分かった」状態に持っていく力(ポジティブ・ケイパビリティ)で何とかなる分かりやすいものよりも、時代が進むほどにずっと多くなってきているように思われます。 今期のおとめ座もまた、そんな力を発露させ、磨いていくことの大切さに改めて思い巡らせてみてはいかがでしょうか。 参考:帚木蓬生『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』(朝日選書) 《天秤座(てんびん座)》(9/23〜10/23)今期のてんびん座のキーワードは、「帰るところ」。 2020年12月22日をもって地の時代から風の時代に本格的に移行した。昨今、そんな木星と土星の邂逅周期に基づいた約200年ごとの「ミューテーション(移り変わり)」が占星術界隈では決まり文句のように語られていますが、実際にはただ待っていれば時代の方が勝手に変わってくれる訳ではもちろんありません。 ミューテーションはある種のサイクルであり、あくまで自分なりの人生文脈に「風」のシンボリズムを生かしていかなければ、上辺だけの言葉をなぞって、ただ傍観者として通りすぎていく惑星を見送るだけで終わってしまうでしょう。 例えば、前回の風の時代である鎌倉時代は日本独自の浄土仏教が花開いていった時期でもありました。「末法の時代には、もはや悟りの道を完遂することができない」「私のような愚者は他力の道しかない」といった姿勢を強烈にもった弱者救済型の宗教である浄土仏教は、「帰るところ」を提示する仏道でもありました。 宗教学者の釈徹宗は、『法然親鸞一遍』の中である韓国の宗教学者の弁として、「日本人の宗教性を最もよく表しているのは『夕焼け小焼け』の歌だ」という言葉を紹介しています。 「夕焼小焼で日が暮れて/山のお寺の鐘がなる/お手々つないで皆かえろ/烏と一緒に帰りましょう 子供が帰った後からは/円い大きなお月さま/小鳥が夢を見る頃は/空にはきらきら金の星」 (中村雨紅作詞) 釈はここで語られる「夕焼」「お寺の鐘」「お手々つないで」などの言葉に着目し、これらは「共生感覚」「生命感」「無常観」「深みのある悲哀感」など「日本の宗教的情緒を見事に象徴しています」と言及していますが、大正時代に書かれたこの歌詞の世界は現代ではもはや失われてしまいました。 もし現代においてこうした「帰るところ」や「また会える世界」を指し示す言葉があるとすれば、それはどんな表現になるのでしょうか。 今期のてんびん座は、それくらい大きな視点から自分のこころの支えとは何かということについて、考えを巡らせてみるといいかも知れません。 参考:釈徹宗『法然親鸞一遍』(新潮選書) 《蠍座(さそり座)》(10/24〜11/22)今期のさそり座のキーワードは、「助け合いとしての贈与」。 他人との出会いこそが、人間を動物ではなく人間らしく作り変えていくのだとしたら、「共にある」ことは人間存在の本質にかかわる重要な営みですが、資本主義の浸透しきった世界で生きている私たちは、ともすると見返りや対価など行為に際して経済合理性を前提に考えてしまう癖がついてしまっているように思います。 しかし今西仁司の『交易する人間』によれば、そうした資本主義的交換ないし市場的交換というのは、贈与体制を解体することで初めて歴史的に登場してきたのであり、贈与体制がほぼ完全に歴史的敗北をみるのは、たかだか十九世紀の中葉でしかないのだそうです。 それこそが「近代」への歴史的転換であり、「私的所有」体制への一元化だった訳ですが、それはなにより、生産者と生産手段(特に土地と自然)のささやかな分離から生じたのだ、と。 今西は私的所有体制または資本主義の出現は歴史的に理由があったし、それを逆転することはできないと断った上で、「資本主義が浸透する(寄生する)市場経済は、人間(個人と集団のすべて)の現実的な生活の基盤を根底から破壊する傾向がある」のだと警鐘を鳴らします。 では、そうした破壊的作用を克服するにはどうすればいいのか。今西はマルセル・モースの言葉を引用しながら、「受け取るのと同じ程度に与えるなら、すべてがうまくいくであろう」という贈与倫理の復活に期待しつつも、それがどのように可能となるか、という問いに関しては依然として誰も答えをうまく用意できないままであるとも述べています。 今期のさそり座もまた、誰か何か(自然や土地)と「共にある」ことの豊かさをどうしたら取り戻し、分離や断絶を結びなおしていくことができるかが、改めて問われていきそうです。 参考:今西仁司『交易する人間(ホモ・コムニカンス)贈与と交換の人間学』(講談社学術文庫) 《射手座(いて座)》(11/23〜12/21)今期のいて座のキーワードは、「カイロス的時間感覚」。 昨年は大企業や派遣会社に不当な理由で解雇を通告されたという話をニュースだけでなく身近なところからも少なからず聞いた年でもありましたが、これは単にコロナの影響というより、かつてカール・マルクスやジョージ・オーウェルによって予言された管理社会が到来しつつあることを、改めてコロナが炙りだしたに過ぎないのだと言えるでしょう。 こうした企業側の生産性を時間に換算するような客観的で合理主義的な時間感覚について、哲学者のジョルジョ・アガンベンは「クロノス」という古代ギリシャの時間の神にひもづく言葉で表す一方、身体によって経験される質的な変容を伴う主観的な時間間隔を「カイロス」という言葉で表現しました。 アガンベンによれば、近代科学が切り開いた認識、あるいは計算可能な時間感覚は「経験を可能なかぎり人間の外に、つまりは道具と数のなかに移し換えていく」ような営みと結びつきやすく、資本主義システムはそれを巧妙に利用しながら私たちの生活をいつのまにか変えてしまった訳です。 しかし、そもそも「経験」というものは確実性や数値化とは相容れないものであり、それゆえにアガンベンは「ひとたび計算可能で確実なものとなってしまったなら、そのときにはその経験はただちに権威を失ってしまう」のだと言います。 このことは、カイロスという神がギリシャ語の「機会(チャンス)」に由来し、宿命あるいは神意によって配剤され、人間に決断を伴う応答を要求するような決定的瞬間を意味することを考えれば、自然と合点が行くのではないでしょうか。 そうした人間のカイロス的想像世界は、現代の資本主義社会が前提とする定量的時間や物質世界の下位に置かれている訳ですが、今期のいて座が突きつけられているテーマもまた、どうしたらそのヒエラルキー的関係を転倒していくことができるかということと深く関連しているように思います。 参考:ジョルジュ・アガンベン、訳『幼児期と歴史 経験の破壊と歴史の起源』(岩波書店) 《山羊座(やぎ座)》(12/22〜1/19)今期のやぎ座のキーワードは、「おのずからとみずからのあわい」。 気候変動にしろ、感染症にしろ、自然の猛威はつねに想定外の暴力をもって私たちを襲ってきましたが、文明社会が無意識のうちに前提としてしまう「安全神話」というものも、そもそもはかりしれない自然の働きを「はかりうる」ものと考え違いをしてしまうところから生まれてくるのではないでしょうか。 倫理学者の竹内整一はこれを「おのずから」と「みずから」の「あわい」の問題として設定しています。すなわち、「「はかる」とは、すぐれて「みずから」の営みを表す言葉であるが、その営みが「おのずから」との、ほどよい「あわい」を失って暴走し出したところに、近現代の科学・技術の問題があるのではないか」と。 ここで言う「おのずから」とは、震災をはじめ、四季折々の移り行きもそうですが、自然に、ひとりでに、ということで、私たちはそれを時に偶然として捉え、時に必然として捉えたりする訳ですが、いずれにせよ、老いや死などと同じく、生きている以上、不可避な働きとしてあります。 無論、そこに自分自身の力を働かせる「みずから」が加わることで、立ち向かうことで避けられたり、可能になったりすることもあるにはありますが、世の中や人生のさまざまな出来事というものが両方からのせめぎあいの「あわい(間/淡い)」の上に成り立つ以上、根本的にはそこにはどうにもできない領域を認めざるを得ない。 そうした“余白”のある世界観や人生観がふと口をついて出たときに、私たちは「仕方ない」という言葉を使ってきたはずです。 今期のやぎ座もまた、ただいたずらに自身の無力さを嘆いてみせる訳でもなく、かといって努力や意志ですべてをはかろうとする訳でもないところで、そっと「仕方ない」とつぶやけるだけの余白を感じ取っていくことが、ひとつのテーマとなっていくでしょう。 参考:竹内整一『やまと言葉で哲学する 「おのずから」と「みずから」のあわいで』(春秋社) 《水瓶座(みずがめ座)》(1/20〜2/18)今期のみずがめ座のキーワードは、「brachliegen」。 2020年は主に新型コロナウイルス感染症への対策をめぐって、政府やその長として総理と言うより、日本学術会議(あらゆる分野の科学者の意見をまとめ国内外に発信する機関)の存在感を改めて感じさせられた年でもありました。 しかし一方で、科学が探究する決定論的な真理や政治的理念といった解や意味をいくら単線的に追求したところで、それはコロナ禍で分断を深めた社会やそこに暮らす人々の痛みや、そこはかとない不安が和らいだり解消されたりすることとはまったく無縁なのだということも、改めて痛感させられたのではないでしょうか。 哲学者のジョルジョ・アガンベンは、科学や政治もまた人間が作り出すものである以上「閉じられた世界」であり、例えば動物などは決してそれを知り得ないにも関わらず、人間以上にいきいきと豊かに生をまっとうしているように見えることについて、「動物の放心」という言葉で表しました。 さらに興味深いことに、アガンベンはそうした動物の「真理については何ひとつ知らないし、何ひとつ予期してもいない」状態について、人間の「深い倦怠」と似ているという指摘もしています。 アガンベンはこの特殊な状態について、「不活性のまま滞留する」と翻訳される「brachliegen」というドイツ語の動詞にも置き換えており、これは翌年に種を撒くことができるように耕作しないままにしておく農地を意味するBrache(休耕地)という言葉に由来し、活動しないまま、あらゆる判断を宙づりにしたままに保持されてあるということであるとも説明しています。 同様に、今期のみずがめ座もまた、そんな風に具体的な可能性を活性化しないようにすることによってはじめて「本質的な震撼」を顕現させ、そこにいきいきと豊かに生をまっとうしていくきっかけを見出していくことがテーマとなっていきそうです。 例えば、波乱に満ちた人間世界とは異なる次元にいる鳥たちが、そのさえずりの中で突き抜けた歓喜とともにあるように。 参考:ジョルジョ・アガンベン、岡田温司・多賀健太郎訳『開かれ―人間と動物』(平凡社ライブラリー) 《魚座(うお座)》(2/19〜3/20)今期のうお座のキーワードは、「無言の前衛」。 2020年はコロナ対策について各国の首脳がみせた力強く頼もしいリーダーシップを羨ましがったり、日本政府とのあまりの違いに落胆を隠さない人々の反応をSNSなどで何度も目にしましたが、個人的にはそうした光景に直面するたび、かつて訪れたヨーロッパの国で感じた、街のすべての光景が人々の意志に強く繋がれて出来ているような印象を思い出していました。 そこには日本では感じられた、何か危うい、あいまいなものを、解釈の余地を温存したまま楽しんだり、見つめたりする空気のようなものがなかったのです。 いま新しい年を迎えていくにあたって、改めて各国ごとのニューノーマルということを考えていく上で、否が応でも私たちは「日本らしさ」の再発見という課題を突きつけられていくのではないか。そんな風にも思っている訳ですが、ここで思い出されてくるのが、赤瀬川原平の『千利休 無言の前衛』です。 「新しい価値観の生まれてくるような世界にあっては、言葉というものの乱暴さばかりが目につくのである。どのように丁寧な言葉を心がけても、言葉の存在自体が乱暴になっていく。何事かを言葉に託すごとに、その言葉に裏切られる。そして沈黙が生れる。」 質素さを尊ぶ禅の精神を取れいれた「わび茶」によって茶の湯の革命児となり、その高い美意識ゆえに秀吉の怒りを買い、自害を命じられて生涯を終えた千利休(せんのりきゅう)について、赤瀬川はさらに次のように続けるのです。 「だから利休は言葉を使わずに、何事かを黙って示す、ということになる。示すというより、黙って置くのだろう。その置かれたものに人が何事か気付いてくれればいいし、気付いてくれなければ仕方がない。そのまま黙っている。というふうであったろうと想像している。何事かを説明し、説得する、というようなことはいちばん遠い人だと思うのである。いっぽう秀吉というのは、何事かを示しながらどんどんしゃべる、そんな人ではなかったのか。」 ある意味で、今期のうお座もまた、いかにこうした「黙っておかれた何事か」そのものになっていけるかというところにあるのではないでしょうか。そしてそれは、日本らしさという空気感とも少なからず自然と一致してくるはずです。 参考:赤瀬川原平『千利休 無言の前衛』(岩波新書) <プロフィール>應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。--------占いの関連記事もチェック--------ルネ・ヴァン・ダール研究所のMORE HAPPY 占い(無料)365日お誕生日占い(無料)文/SUGAR イラスト/チヤキ12月27日