ダイアン・クルーガー、役にのめり込み「少し殺された気分に」『#女は二度決断する』
SPUR.JP

4月14日公開の映画『女は二度決断する』で、第70回カンヌ国際映画祭主演女優賞に輝いたダイアン・クルーガー。悲劇に見舞われたヒロインを全身全霊で演じるあまり、「実際に少し殺された気分になった」という彼女の「あえて答えを出さない」決断の理由は?


 ファッションモデルとしてのキャリアを持ち、その美貌で傾国の美女を演じたこともあるダイアン。11年ぶりに日本を訪れたというこの日は、ぴったりとしたブラックのハイネックトップスにデニムという装い。シンプルなスタイルがかえって圧倒的な素材美を引き立たせ、知的な大人の風格を漂わせている。しかし、カンヌやゴールデングローブで絶賛された『女は二度決断する』作中で主人公カティヤを演じた彼女は、根元が黒くなったボサボサのブロンドに、シワやクマを露にした化粧っ気のない疲れ切った顔。着の身着のままのような打ち拉がれた姿について、「いままであんなひどい格好で作品に出たことはありません」と苦笑気味に振り返った。

「カティヤになり切るために、浴びるようにお酒を飲み、ひっきりなしにタバコを吸って。役に入り込むあまり不眠気味になって体重もごっそり落ちて、本当にひどい状態だったから、鏡を見る度落ち込んだわ。撮影後、お酒もタバコも止めてよく眠るようになったら、それだけで元に戻ったの。お酒とタバコを止めてよく眠るのは肌にいい。これは絶対ね」。

『女は二度決断する』での演技が、世界中で絶賛されたダイアン・クルーガー。

 今作で監督を務めた名匠ファティ・アキンの作品に出ることは、長年の悲願。2012年のカンヌで「あなたの映画に出たい」と直談判した種が5年越しに実り、夢を実現させた。人種差別テロによって最愛の家族を奪われた女性を演じるにあたり、「子どもを持たない私が、カティヤ役をこなせるのかと不安が拭えず、6ヶ月かけてかなり下準備したの。カティヤと同じような被害にあった30組の家族に会って、かなり深く話を聞いて……。そういう現実があると知ってはいたけど、実際に巻き込まれて体験することは本当にまったく違う。テロリズムがもたらすもの、社会に与える影響をまざまざと見せつけられた半年だった。遺族会の方々の悲しみにどっぷり浸かって、撮影の間中ずっと背負って。終る頃には身も心も燃え尽きて、実際にちょっと殺されたような気分。ハッピーとはとても言えない状態だった。実際、撮り終えて三ヶ月は、ただ引きこもってぼーっと過ごしたの。一ヶ月間は、電話も取れなかった。ひたすら休んで、軽やかさを取り戻すように努めたわ」。


半年間かけてテロ被害者の家族30組に面会。そこで目の当たりにした悲しみや絶望を背負って撮影に臨んだ。

 全身全霊で臨んだカティヤ役は「最高の演技」と世界中で評された。台詞に頼ることなく、気持ちの揺れや内面の激しさを表現する秘訣を、「カティヤの靴を履くこと」と表現したダイアン。「撮影は時系列に沿った順撮りだったから、カティヤとしてその瞬間を生き、感じればよかった。大げさな演技をしなくても目に感情を宿しさえすれば、アキン監督がカメラで捉えて伝えるのを助けてくれた。そういう信頼関係があるコラボレーションだったわ」。

邦題にもなっているカティヤの「決断」について、当初はどう説得力をもたせるか悩んだものの「難しいのはあの決断に至る軌跡の部分だけ。演じていることを忘れ、カティヤの心で生きてみると、すべてがはがれ落ちた彼女に残された選択肢はひとつしかなかないことがわかったの」。
「カティヤの靴を履き、カティヤとして生き、カティヤとして感じる」ことが、作品にリアリティをもたらした。


 人種差別主義者によるテロを描いた本作を通し、信条や人種、国籍の違いで同じ人間が憎しみ合う世界に向け、伝えたいメッセージがあるかと訊ねると、言葉選びは慎重になった。
「テロリズム、根深い偏見、誰の中にもある自分と見た目の違う人を疑い責めたくなる部分……。そういう現実に立ち向かうために、あえて簡単にわかる正しさを描かないことも大切なこと。現実を映しとった作品でありながら、加害者側からの視点には触れず、忘れ去られがちな被害者の悲しみと痛みをひたすら丁寧に追う。そういう手法をとることで、かえって心をえぐるように訴えかける作品に仕上がったはず」。『女は二度決断する』は4月14日に全国公開。ダイアンが身を削って演じたカティヤの決断を、あなたはどう受け止める?

簡単に答えの出ない現実を描く『女は二度決断する』。絶望や悲しみを丁寧に演じることで訴えかける作品に。

『女は二度決断する』は4月14日から全国公開。

半年間かけてテロ被害者の家族30組に面会。そこで目の当たりにした悲しみや絶望を背負って撮影に臨んだ。

「カティヤの靴を履き、カティヤとして生き、カティヤとして感じる」ことが、作品にリアリティをもたらした。

簡単に答えの出ない現実を描く『女は二度決断する』。絶望や悲しみを丁寧に演じることで訴えかける作品に。

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