俳優の吉沢亮が毎回ゲストを迎え、名作椅子に座ってトークを繰り広げる本連載。第10回のゲストは、公開中の主演映画『AWAKE』で監督・脚本を務めた山田篤宏さん。 どういう表情をするのかずっと楽しみだった 吉沢 映画『AWAKE』は将棋が題材になっていますが、将棋は小学生の頃に少し触れたことがあったくらいで、ルールは知っていても、それこそ駒の持ち方や指し方にもあんなにこだわりがあるとは知らなかったから、そこはちょっと難しかったです。山田 そうですよね。でも、大丈夫。棋士の先生方からは将棋愛にあふれているという言葉をいただいているので。吉沢 よかったです(笑)。山田 演技に関しては、もう圧倒的な信頼感がありましたから、僕自身は何も心配することはなかったですね。実際、すごいなあと思う場面がいくつもありました。たとえば、吉沢くん演じる英一が自分のつくった将棋プログラムにAWAKEと名付けるシーンは、脚本を僕が書いているので、ある程度こういうしゃべり方だろうなというのをイメージしているわけですけど、それとはまったく違うやり方だったんです。でも、そっちのほうがいいんですよ。吉沢 いやぁ、うれしいです。山田 落合モトキさん演じる磯野に「飲みに行くぞ」と言われて、笑おうとしてうまく笑えないみたいな表情をするじゃないですか。あのシーンもよかった。笑顔をつくれない人が笑顔になる感じが絶妙なんですよ。あとは、やっぱり終盤の対局のシーンの表情ですね。吉沢 あそこは監督がめちゃくちゃこだわっていましたよね。初めてお会いしたときからそのシーンの話をされて、「お願いします」「任せます」みたいなことを言われたのを覚えてます。山田 やっぱりクライマックスの場面ですからね。ネタバレになってしまうので、詳しくは言えないんですけど、そこで吉沢くんはどういう表情をするんだろうというのはずっと楽しみで、とにかく全部お任せしようと思ってました。現場も最小限のスタッフにして、集中してもらうために5分前くらいからカメラを回し始めて、たしか1回しか撮りませんと伝えたんですよね。吉沢 あれはシビれました(笑)。山田 与えられる限りのプレッシャーを与えて撮ったんですけど、見事にそれをはねのけて。本当にあのシーンは素晴らしかったです。 今度やるときは明るいコメディを作りたい 吉沢 これはお世辞でも何でもなくて、『AWAKE』は今まで出演した作品の中でもすごく好きな作品です。山田 ありがとうございます。お世辞だとしてもうれしいです(笑)。吉沢 オリジナルの脚本ですけど、やっぱりオリジナルでやりたいというこだわりはあるんですか?山田 あんまりないんですけどね。オリジナルのほうがいいですか?吉沢 僕の場合は、オリジナルのほうがやっていて楽しいです。もちろん原作がある作品も楽しいですけど、原作の持っているイメージがあるので、イチからつくれるオリジナルのほうがやれることが多いし、面白いです。だから、監督にはぜひまたオリジナルで撮ってほしいです。山田 頑張ります(笑)。またご一緒できるなら、今度は明るいコメディをやりたいですね。吉沢くんのコメディは面白いし、僕もコメディは好きなので。吉沢 いいですね。楽しみです! 今月の名作椅子 「チェア ワン」。現代の名匠として評価の高いコンスタンティン・グルチッチの代表作。三角形をモジュールに立体的に形成された、ムダのない斬新なデザインが特徴。アルミニウム素材でできているので屋外でも使用することができ、スタッキングも可能。各¥48,000/マジス ジャパン(マジス) PROFILEよしざわ りょう●1994年、東京都生まれ。映画『キングダム』(’19)で日本アカデミー賞ほか各映画賞の助演男優賞を受賞。2021年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」では主人公の渋沢栄一を演じる。カーディガン¥42,000(シュタイン)・ステッチスウェット¥49,000(ダブレット)/エンケル その他/スタイリスト私物 PROFILEやまだ あつひろ●1980年、東京都生まれ。ニューヨーク大学で映画を学ぶ。第1回木下グループ新人監督賞において、応募総数241作品の中からグランプリに選ばれた本作で商業映画デビュー。 SOURCE:SPUR 2021年2月号「吉沢 亮のTAKE YOUR SEAT」interview & text: Masayuki Sawada photography: Jimi Franklin styling: Daisuke Araki (Ryo Yoshizawa), Takashi Imayoshi (prop) hair & make-up: Masanori Kobayashi 〈SHIMA〉(Ryo Yoshizawa)