親子、きょうだいで今すぐ取り組みたい 相続トラブルを避けるための4ステップ【今から考える相続のこと】

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Case1. 財産と、親の気持ちの棚卸しをする

 争族は、どんな家庭にも起こりうる問題。だとしたら、トラブルを避けるべく準備しておく必要がありそう。
「『まだ親が元気だから』と先送りにしている人が多いようですが、相続の話題は、親が元気なうちでないとできないもの。親が、病気になったり体が弱ってきたりすると、気が引けて口に出せなくなるだろうと思います。病状によっては、それどころではなくなる場合もありますしね」と、一橋さん。
ましてや、認知症の兆候が表れてしまったら、相続について、正しい情報や判断が得られない可能性もある。
「実際、高齢の親に財産を確認したところ、正確に把握しておらず、親戚に『祖父から継いだ山があったはず』と指摘されて、山林を所有していたことが判明したことがありました。こういったケース、実はとても多いんですよ。登記簿謄本が手元にあったり、固定資産税の通知が毎年きていたりすれば、遺された家族が確認できますが、なかには、評価額が低いなどの理由で固定資産税がかかっていない土地もありますからね。また、本人がふだん利用しておらず、存在すら忘れてしまった銀行口座も少なくありません」
 本人が亡くなっても、家族が届け出ないかぎり、銀行側が知る術はない。その口座は休眠口座となり、故人の預金が家族に渡る可能性は低いのだとか。「財産を調べるのと同時に、誰が法定相続人になるかを確認しましょう。そのうえで、親がどうしたいと思っているのか、気持ちの棚卸しをすること。法定相続人がひとりなら迷うことはないでしょうが、複数いる場合は誰に何を遺すのかも想定を。それが公平でない場合は、相続人みんなが納得できるように対策をとらなければなりません。また、親の老後をどうするかも、相続にかかわる問題なので、あわせて考えておきたいですね。特定の子供が面倒を見るなら、それを考慮した財産分けがベターですし、介護施設を利用するつもりなら、その費用を除いた金額で、財産分けをする必要があります」

Case2.家族で情報を共有する

「財産と気持ちの棚卸しができたら、次は、家族みんなで具体的な話し合いを。親の意向に子供たちが従うとはかぎりませんし、相続税が発生しそうなのに、それに充てる現金がないことに直面するかもしれません。家族で話し合うことで、こうした〝わが家の問題点〞が見えてくるだろうと思います」(一橋さん)
 心がけたいのは、親と娘、親と息子のように個別にではなく、相続人がそろったところで話し合うこと。「親も年をとると気弱になり、子供それぞれに〝おいしいこと〞をいう場合もあります。親が亡くなったあとで、『私はこう聞いていた』『いや、オレにはこういっていた』などと、もめることもあれば、『どうして自分にはいってくれなかったんだ』『本当にそういったの?』と、怒りや疑念を抱く子供がいるかもしれません。その結果、きょうだい間に争いが生じる事例は多々あります。関係者みんなが共通認識できる場をもつことが大切です」

Case3. 必要に応じて専門家にアドバイスを求める

話し合いで問題点が見えてきたら、必要に応じて専門家を入れ、対策を練るのが得策。相続の専門家には、一橋さんのような相続診断士のほか、税理士や弁護士、司法書士などがいる。特に不動産をもっている場合、プロにアドバイスしてもらうのがおすすめだそう。
「土地は、用途によって評価方法が異なるうえに、立地形状が評価額に影響することもあるなど、けっこう複雑。ですから、正しい評価額を導き出したいのなら、相続に精通したプロにゆだねるのが安心です。また、相続税が発生する場合、どのように原資を捻出すればいいか、節税したいなら、どんな方法があるのかもアドバイスしてもらえますから」(一橋さん)
 弁護士は、家族がもめた際の〝仲介役〞という役割も担ってくれる。客観的な立場で、それぞれの意向と事情を聞きとり、妥協点を見つけ、解決策を導き出す。専門知識をもった第三者が介入すれば、大きなトラブルに発展するのを避けられることも。
「最近は、もめる前に相談にいらっしゃる家庭も増えています。初めから専門家が入ることで、家族が冷静に話し合えることもありますしね」

Case4. 定期的に家族でコミュニケーションをとる

 相続についての骨子が決まったら、それで一件落着というわけではない。「人の気持ちは変わりますし、事情も、財産の内容だって変わるかもしれません。なので、定期的に、家族で話し合う場をもってほしいですね。お盆やお正月など家族みんなが顔を合わせたときに、『あのときはこう決めたけれど、その後、気持ちに変化はない?』など、声をかけるだけでもOKです」
 数多くの相続問題を扱ってきた一橋さんがたどりついた〝争族を避ける最大の秘訣〞は、「家族が十分なコミュニケーションをとること」。
「家族で、昔話をするだけでも構わないのです。他愛のない話をしているうちに、『あのころはお姉ちゃんに頼っていたな』とか、『かわいい妹だったな』など、当時の気持ちが思い出され、お互いに抱いていたしこりが解消されたという事例も、これまでたくさん目にしてきました。人間とは不思議なもので、たとえ一度は距離が開いてしまっても、どちらかが歩み寄れば、もう一方も近づこうとするんですよね。コミュニケーションをとることこそが、家族の絆を深め、円満な相続につながるのだと思います」

教えてくれたのは・・・

上級相続診断士 一橋香織さん

笑顔相続サロン代表。アフィリエイティッドファイナンシャルプランナー、終活カウンセラー上級、家族信託コーディネーター。これまで2000件もの相続問題を解決し、著書も多数。     




『家族に迷惑をかけたくなければ相続の準備は今すぐしなさい』

一橋香織 PHP 研究所 ¥1,000







身近な問題である「相続」だけど、実は、なんの対策も講じていない人も少なくないよう。「法律に沿って行えばスムーズにいくはず」「たいした財産がないから大丈夫」と思っているなら、要注意。2000件以上の相続と対峙してきた上級相続診断士の一橋香織さんが、「もめやすいケース」5つをピックアップ。ひとつでも該当しているなら……、今すぐ相続対策を!
監修/税理士法人HOP 税理士 高橋大祐 法律事務所キノール東京 代表弁護士 木野綾子 取材・文/村上早苗 イラスト/高篠裕子(asterisk-agency) 資料出典『家族に迷惑をかけたくなければ相続の準備は今すぐしなさい』(一橋香織著/PHP研究所)
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